チェコの大学に正規留学する上で越えなければいけない大きい壁がNostrification(ノストリフィケーション)です。これは海外の学生がチェコに来た時に、チェコの教育水準を満たしているかの確認なのですが、この手続きがややこしく挫折する人もいたりします。今回はNostrificationをBrnoで行った人の体験談を紹介します。
面倒な手続き、ブルノでのNostrification申請手順と試験について
先ずは簡単に自己紹介をしていきます。私は関西の専門学校を卒業して日本で3年間の社会経験を経ました。専門時代の終わり頃から知り合ったチェコ人の彼氏がいて、彼氏と将来どこに住むかという話をしてきたのが、元々の理由でした。そこで将来の選択肢として、日本のブラックな会社で働き続けて家族の時間が取れない代わりにお金を持つか、もっと家族との時間を持てるヨーロッパ(というかチェコ)にするか話し合った結果、彼氏の国の渡チェコしたのがチェコに来たきっかけです。
チェコに来た当初はチェコ語なんてもちろん何も知りませんでした。そこでチェコで生活していく上で必要なので、チェコ語を学ぶ決意をし、語学学校に通い始めました。そこでクラスメイトの他の若い外国人たちに感化され、またチェコはチェコ語で国立大学に通う場合授業料が無料と聞き、ブルノの国立大学を受験。Nostrification(ノストリフィケーション)申請時のチェコ語レベルはB1-2程度でした。
改めてNostrificationとは
改めて、Nostrificationについて書きたいと思います。チェコで日本の高等学校卒業後に大学を受験したい人(日本で大学を卒業していない人)は、Nostrificationの手続きが必要になります。私は、最終学歴が専門学校卒業なので、Nostrificationの手続きが必要でした。ブルノの語学学校に一緒に通っていたロシア人、カザフスタン人たちと情報を交換するとともに、チェコ人の彼氏にも書類集めや手続きの仕方について、調べてもらったり、手伝ってもらいました。
ちなみに、ブルノの外国人の間では、私立大学は国立大学よりあまり人気がありません。なぜなら、私立大学に通うには学費を支払わなければならないからです。チェコの国立大学は(年齢制限などのルールがありますが)チェコ語であれば無料で授業が行われます。ですから、外国人の私たちでもチャンスがあります。チェコ語の中級程度(B1-2)までの言語レベルになり、チェコ語能力試験(CCE)で自分の行きたい大学の入学に必要な級を受験します。もちろん、B2を取得してから入学できたとしても、辞書に載っていない専門用語のチェコ語と格闘していくことになりますので、チェコ語の正しい文法や新しい単語を身に着けていく必要があります。
高等学校を卒業したばかりではほとんどの学生はお金がありませんよね。チェコのいいところは、学びたい生徒に無料で授業を受けさせたり、やる気のある生徒には真摯に向き合ってくれる先生が多いことだと思います。日本のように奨学金を返すために朝から晩までバイトをしている生徒より、インターンやボランティアをしている生徒が多いのも、素敵だなと思います。また、ブルノはIT・情報系の大学のレベルがかなり優秀で高く、そのままブルノに残って就職する人が多いので、IT・情報関連の仕事が多いのも事実です。
話を戻しますと、大学を受験するにあたって、願書、チェコ語能力試験(CCE)それらと一緒に、このNostrificationを提出することになります。日本でも、大学を受験するにあたって、国から認定されている高等学校を卒業している、または卒業見込みがある人が対象となっていますよね。それと同じだと考えるといいと思います。
申請の手続き
チェコでは、申請者の居住地の管轄の地域当局(教育省)で受理してもらえます。(ブルノならブルノで、プラハならプラハです。)そこで担当者が、その提出された日本の高等学校と似ているブルノの高等学校との時間数を照らし合わせて、足りない時間数を口頭試験で埋めよう、ということになります。ちなみに普通科で卒業していたら、チェコの普通科で、音楽科を卒業していたら、チェコの音楽科で比較されるようになっています。
※小学校、中学校の認定もしているようです。例えば日本で小学校を卒業して、チェコで中学校に入学する場合などにも使えそうです。
※英語で受験、授業を受けることになる人(医学部)、交換留学生などの留学生はNostrificationは必要ないです。学校の指示に従ってください。
※チェコの企業で仕事をはじめるときにNostrificationを提示してほしいと言われたら、このことです。
申請の注意点
必要書類を必ず揃えること、よく忘れられているのが申請書です。その場でも書ける可能性はありますが、全て事前に手元に揃えておくことをお勧めします。
ちなみに私は、自分の書類を英語からも、日本語からも、チェコ語に直してもらった経験があります。探し方が悪かったのか、ブルノでは翻訳者を見つけられず、いずれもプラハに住む方にお願いしました。そして、もしかしたら口頭試験があるかもしれないと念頭において、あらかじめ日本人の通訳者(プラハで自分の書類を日本語からチェコ語に翻訳してくれた方)に早めにお願いをしていました。
ブルノの国立大学の場合
ブルノの国立大学では、願書提出時と同時にNostrificationが提出ができない場合は、願書は受理されていても受験資格がなくなる場合(初夏、5月ごろ)もあります。入学する時(8月~9月頭)まで待ってくれるところもあるようです。学校によっては、卒業試験前(入学してから3年後)までに提出できればいいなど、大学や学長によってかなり差があるように思います。私は語学学校の友達たちに促されて早い段階で申し込みをしました。なので手続きの終了後、大学受験の勉強に専念することができました。
Nostrificationの手続きに必要な書類を提出後、すぐにその建物の中にあるお金を取り扱う課に行くように言われました。ブルノで初めて手続きに行った際は建物の構造が分かりづらく少し迷いました。最初に書類を提出しに行き、書類の確認、問題が無ければ違う窓口で申請料の1000コルナを支払いに行きます。払い終わったらその場で領収書を受け取り、先の書類を提出したところに戻って、その領収書を提出して手続きが終了です。
ブルノでは、担当者はどうやら1人だったように思われます。私は一人で行きました。書類にミスがあったので、何度か通ったのですが、担当してくださったチェコ人はいつも同じ女性でした。時間ギリギリに行ってしまうと、待っていても前の方の手続きが伸びたりして、時間外になってしまい、受け取ってもらえないこともありますので、時間に余裕を持って行ったほうがいいです。
手続きの場所
場所は、Cejl 530/73, 601 82 Brno です。
ちなみにこの通りは、ブルノの中で一番危ない通りと言われているので、裏道にむやみに入らない、高価なものを身につけないなど、気を引き締めていくことをお勧めします。
書類集めから実際の申請まで全体にかかった期間
書類集めから実際の申請まで全体にかかった期間は、大体一か月半くらいでした。これはそもそもチェコに移住した時はチェコで大学を受験してみようと思っていたわけではなかったのと、Nostrificationの存在を知らなかったので日本で書類集めや準備をしていませんでした。
手続きが必要になった時、初めに得た情報としては、母校から単位証明書を受け取ること。成績は関係なくどのくらい勉強した時間があるかが重要とのこと。日本だったら成績が重視されて、授業の時間数なんて関係ないと思いますが、チェコでは視点が違うようで、Nostrificationの書類手続きで勉強した時間を証明するのが一番大事な書類でした。
ちなみに私の場合は日本の母校に連絡しましたが、最初は成績証明書と間違って頼んでいると思われて、私が必要な書類を理解してもらえないのでかなりストレスと時間がかかりました。担当者の優しさだとは思いますが、ここで根気負けせずしっかりと自分の必要な書類を伝えてください。ちなみに申請してから受け取りまでに大体一週間程度かかっています。お金はかかりますが、念のため、色々な自身の書類を集めておくのも手かと思います。
その後、母校から受け取った書類には、霞が関の外務省でアポスティーユを付けてもらいました。母が直接行ってくれたので、その都度連絡が取れて、受取までに大体一週間程度でスムーズに進みました。そして、その書類を輸送してもらいました。日本からブルノに書類を送る時間も大体一週間程度で届きました。そこからその書類を翻訳してもらい、追加で大体一週間程度かかりました。ここまでの手続きで、合計一か月程度かかると考えてよいと思います。
その他、同時進行で用意しておく必要がある書類は、Nostrificationの申請書、チェコの住所の証明書、プラハの日本大使館から日本の学校で中学校や高校の単位は何時間分に相当するという書類などです。
ややこしく感じている人は、一つ一つの作業を丁寧にこなしていくことをお勧めします。急いでしまうと、書類に間違いが発生したり、判子をもらい忘れたりしますから。
申請してからの結果を受け取るまでの期間
申請してから、書類を受け取るまでの期間は、大体一か月くらいだったと思います。ちなみに私が受けた試験は地理と情報でした。
試験
私は連絡の結果、2科目受ける必要がありました。そこで事前にお願いしていた翻訳者兼通訳者の方にブルノの指定された学校に一緒に行ってもらい、口頭試験を受けました。試験内容は、事前に送られてくるリストの中からです。日本の受験生用の参考書を使って、勉強しました。なかなか忘れている部分などもあって、苦労しました。念のため、チェコ語で書かれたチェコの高校生が使う参考書を読んでみましたが、全く理解できず、使いませんでした。
その試験場となる学校のシステムに添って行われるので、審査をする方々は、実際そこの学校で教師として働かれています。他に一緒にテストを受けていたのは、ロシア系の人たちで、みんな試験の内容はバラバラでした。当日の試験問題の選び方は、何枚かある問題番号が書かれた裏返しの紙の中から、自分で5枚引き、それを全部答えるというものでした。
問題を選ぶ時は通訳者は別室へと連れていかれました。少し心細くなりながら、前の受験者が自分と全然関係のない教科を話している隣で、15分程度自分の問題の答えを紙に書く時間が与えられました。その後、通訳者が別室から呼ばれて、すぐに訳してもらうという形でした。口頭試験なので、日本のペーパー試験に慣れていた私は言葉に詰まったりしました。そんな時は、チェコの教師陣が色々と助け舟を出してくれました。
他の人から聞いた話では、3問引いてから、自分の答えられそうなものを1問選ぶ方法だったり、最初から1問だけ引く方法など、学校によって異なるように感じました。私は二教科を同時に一日で受験することになっていました。私の友人のロシア人は、四教科受けることになっていて、どれか一つでも失敗したら最初からやり直しだと教えてくれました。(嘘だと思っていましたが、本当でした。)どちらか片方の教科だけ合格しても再試験になることを知っていたので、二教科目が終わるまで、全く気が抜けませんでした。
感想
チェコの高校生の最終試験や大学での期末試験、卒業試験では、テストは口頭試験が普通なので日頃から自分の考えを主張したり、意見できるようにシュミレーションやトレーニングをしておくといいかと思います。日本の教育システムでは、日頃教える立場にいる教師に、問題と答えを口頭で説明するのは、ちょっとあり得ないことかもしれないです。しかし、その時に基本の答えはもちろんのこと、話を止めずに、さらに興味深い答えを付け加えることができると、いい評価をもらえることがあります。Nostrificationでは、合格することが一番です。頑張ってください。