ヨーロッパ大学偏差値事情
以前の記事でも紹介したように、ヨーロッパと言っても国ごとによって良い大学、悪い大学があり、また大学内でも学部ごとにレベルの差があるため、一概にどの国のどの大学がおススメ、と単純化することはできません。
【ヨーロッパ大学難易度ランキング】卒業後の進路や授業の質、どこがおススメ?
例えば、上述の記事でまとめたように、世界大学ランキングを参照すると、北欧の中堅国立大学≒西欧の中堅国立大学>東欧のトップ国立大学で、卒業後の年収やポジションなどを勘案すると、西欧諸国と東欧諸国の大学とで差が発生しています。
以下、日本の早慶上智を基準に作成した、各国の同じく「名門~中堅レベル」の大学に通った時の難易度や卒業後の進路表です。
北欧 | 西欧 | 南欧 | 中欧 | 東欧 | 早慶上智 | |
生活費 | 高い | やや高い | やや安い | やや安い | 安い | 普通 |
大学レベル | 高い | 高い | 普通 | 普通 | 低い | やや高い |
入学難易度 | 普通 | 普通 | やや低い | やや低い | 低い | やや難 |
卒業難易度 | 難しい | 難しい | やや高い | 普通 | やや低い | やや低い |
就職レベル | やや高い | 高い | 普通 | 普通 | 低い | やや高い |
言語汎用性 | 普通 | 高い | 高い | やや低い | 普通 | × |
生涯年収 | 高い | やや高い | 普通 | やや低い | 低い | やや高い |



北欧の大学(院)に進学すると・・・
ここでは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどの国を対象にしています。ヨーロッパ各国の中でも特に高い給与水準と安定した経済状況で知られており、大学のクオリティも世界トップクラスです。
メリット
- ヨーロッパでも一流クラスの授業クオリティ
- 英語先進国のため、キレイな英語が身につく
- 治安が良い
- その国で就職すれば卒業後の年収が高い
- 大学のクオリティが高いため、卒業後その他の国でも働きやすい
- 英語のみのプログラムが見つけやすい
デメリット
- 生活費が高い
- 授業・試験の難易度が高い
- 気候的に寒い、暗い
- 母国語の汎用性が少ない
- 現地企業の海外支店はそう多くない
短所として、母国語の汎用性(ノルウェー語、フィンランド語等)が低いため、卒業後は現地の企業で現地専用機と化します。また、経済レベルは極めて高いものの、世界各国に支店を持っている世界的企業、というものがスカンジナビアには少ないのが欠点です。
西欧の大学(院)に進学すると・・・
ここでは、ドイツ、フランス、イギリス、ベルギー、オランダなどを対象にしています。学費によっては国によってまちまちで、ドイツのように国立大学の学費がほぼ無料な国もあれば、イギリスのように高額な学費が必要となる国もあります。
メリット
- ヨーロッパでも一流クラスの授業クオリティ
- 卒業後の年収が高い
- 大学のクオリティが高いため、卒業後その他の国でも働きやすい
- 現地企業(ルノー、BMW等)が欧州各国に進出しており、他の国で採用されやすい
- 母国語の汎用性が高い(ドイツ語、フランス語の場合)
- 日系企業が多く進出しており、日系企業現地採用の道も用意されている
デメリット
- 国によっては英語のプログラムが見つけにくい(フランス、ドイツ等)
- 多少治安が悪い地域もある
- 授業・試験の難易度が高い
卒業後の進路、年収は欧州でもトップクラスです。ドイツ、イギリス、フランスの企業は世界各地に支店を持っており、特にドイツ語とフランス語は世界でも極めて汎用性が高いのが長所です。
ただし、欠点としてどちらの国も自国語人口が多いことから、英語のプログラムが限られていたり、ドイツ語やフランス語が大学入試に必須、というところも少なくありません。また、入学条件に加えて卒業までの道のりも険しいケースが多いです。

南欧の大学(院)に進学すると・・・
ここでは、スペイン、イタリア、ポルトガル、クロアチアなどを対象にしています。大学レベルは北欧・西欧に比べ「やや低い」ものの、その分生活費水準なども「やや低い」です。それでも、ヨーロッパ基準で行けば、平均以上程度のレベルを維持しており、特にスペイン語とイタリア語の需要は高く、卒業後も職が見つけやすい地域の一つです。
メリット
- 生活費は北欧・西欧に比べ「やや安い」
- 母国語の汎用性が高い(スペイン語、イタリア語)
- 大学のレベルは東欧以上、西欧以下で「標準以上」
- 現地人はフレンドリーで友達が作りやすい
- 気候が安定していて冬もそこまで寒くない
デメリット
- 治安がやや悪い
- キレイな英語が身につきにくい
- 国民性が何かと雑
大学レベルとしても、国家レベルとしても、欧州の「中流よりちょっと上」で、西欧ほどバリバリに勉強して卒業後は稼ぐ、というほどではないのなら、南欧のゆったりとした雰囲気は最適です。
デメリットとしては、ビザやお役所仕事など、基本的に南欧スタイルなので、日本人の我々にとってはイラっとする場面が多いかもしれません。
中欧の大学(院)に進学すると・・・
ここでは、チェコ、スロバキア、ハンガリーなどを対象にしています。オーストリアに関しては、地理的には中欧ですが、ドイツ的な教育システムの影響を強く受けており、またドイツ語のプログラムが多く地元企業の年収も高いため、西欧のくくりに入れるのが良いかと思います。
メリット
- 生活費が安い
- 西欧・北欧に比べ試験・卒業が簡単
- 西欧・北欧に比べ入学要件が緩い(ビザを除く)
- 良くも悪くも大学のレベルは「欧州標準」
- 治安が良い
デメリット
- 日本人の前例が少なく、ビザで苦労する
- 卒業後、その他欧州各国で働くのがやや難しい
- 卒業後、その国で働くと生涯年収が日本よりかなり低い
- 現地アクセントの英語が身についてしまう可能性も
- 現地語の汎用性が低い
大学レベルも国家経済水準も「欧州の中流家庭」で、卒業後は北欧・西欧の大学卒ほど幅を利かせることはできませんが、かといって地元の大学をきちんと卒業すれば、どこかしらに雇ってもらえるケースが多いです。
東欧の大学(院)に進学すると・・・
ウクライナ、モルドバ、ルーマニアなどの東欧諸国ですが、授業が簡単な一方で、卒業後の進路が限られてしまうのが難点です。例えば、フランスの大学を卒業してウクライナに就職は可能ですが、ウクライナの大学を卒業してフランスで就職、はかなり厳しいです。
メリット
- 生活費が安い
- 試験が簡単
- 一部言語(ロシア語)に汎用性がある
デメリット
- 卒業後の進路が限られる
- 学位としての価値が低い
- 職が見つけにくい
- 国としての生涯年収が低い
- 治安が悪い
- ビザが取りずらい

おススメの大学ベスト10
最後に、入りやすさ、学費の安さ、授業の質の高さなど総合点で換算して、どこの国の大学がおススメかをピックアップしていきます(Aが最高点、Eが最低点で、Aに近づけば近づくほど理想値です)。
1.ドイツ
入学難易度: (B~D)
卒業難易度: E
授業料 : A(無料)
生活費 : C
授業レベル: B
卒業後進路: A
言語汎用性: A
卒業後の進路、生涯年収、ドイツ語の汎用性、授業のクオリティなど総合的にかんがみて、ドイツは大学留学の際のヨーロッパ随一のおススメ国家です。短所は、試験が難しいので卒業が難しい、学科によってはドイツ語必須のところがある、といった部分です。
2.オランダ
入学難易度: B
卒業難易度: E
授業料 : E(100万円程度)
生活費 : D
授業レベル: A
卒業後進路: B
言語汎用性: E
オランダの大学のレベルはドイツと似たようだと言われており、主な違いは必修言語です。ドイツの場合、ドイツ語のプログラムが多いですが、オランダの場合英語のプログラムが多く、インターナショナルな学生に門戸が開かれています。
短所は、国土が小さいため卒業後オランダにとどまると就職の機会が限られるのと、オランダ語の汎用性が低いことです。

3.ノルウェー
入学難易度: C
卒業難易度: E
授業料 : A(無料)
生活費 : E
授業レベル: B
卒業後進路: A
言語汎用性: A
ドイツ同様、ヨーロッパで有数の外国人でも学費無料の国として知られています。ただ、それゆえに入学の難易度も低くなく、また生活費が非常に高いことでも有名です。欠点としては、寒い、物価が高い、ノルウェー語の汎用性が低い、といったところでしょうか。

4.チェコ
入学難易度: B~D
卒業難易度: C
授業料 : B(20万円程度)
生活費 : B
授業レベル: D
卒業後進路: C
言語汎用性: E
標準的なパラメーターのチェコですが、授業料の安さ、大学の入りやすさ、卒業のしやすさ、卒業後の進路などを総合的に加味してこの位置につけました。入学難易度に関しては、唯一「Nostrification」を受けることになった場合厄介です。
それ以外の点、治安の良さや気候の安定、街並みの美しさなど住みやすさも高評価です。
5.オーストリア
入学難易度: B~C
卒業難易度: D
授業料 : B(年20万円程度)
生活費 : C
授業レベル: B
卒業後進路: C
言語汎用性: A
ドイツと似た教育システムをとるオーストリアですが、教育機関の質は欧州内でも高く評価されています。チェコ同様、治安の良さや町のキレイさなどが魅力です。
また、ドイツのように学費無料ではありませんが、年間の学費20万円程度と、日本の国立大学と比較しても安い水準で、知られざる穴場留学スポットです。


6.イタリア
入学難易度: C
卒業難易度: C
授業料 : B(10万円~20万円程度)
生活費 : C
授業レベル: C
卒業後進路: C
言語汎用性: A
きわめて安定的なパラメータの国です。西欧ほど難しくはないが、東欧ほどでたらめなプログラムでもなく、かつ言語の汎用性が高いため、お勧めできる国の一つです。
また、授業料も他の西欧諸国に比べると安く、ドイツと並んでおススメできる留学先の一つです。
7.フランス
入学難易度: C
卒業難易度: D
授業料 : C(年40万円程度)
生活費 : C
授業レベル: B
卒業後進路: B
言語汎用性: A+
お隣ドイツとしばしばライバル関係にあるフランスです。言語の汎用性としては世界トップで、在学中になんとしても習得する価値があります。ただし、経済水準、大学の質などを見比べると、どうしてもお隣のドイツにわずかながらに引けを取るため、この位置にランクインさせました。
8.スペイン
入学難易度: C
卒業難易度: C
授業料 : C(年20万円~30万円程度)
生活費 : C
授業レベル: C
卒業後進路: B~C
言語汎用性: A+
イタリアと似たパラメーターです。穏やかな南欧の雰囲気で、クラスメイトとわいわいしながら勉強するのには最適の環境で、西欧・北欧にこそ及びませんが、授業クオリティも低くありません。
短所としては、国内の経済指標が悪い、治安が悪い、などといった点です。ただし、在学中にスペイン語を習得できれば、欧州各国で就職の可能性が高まります。
9.スイス
入学難易度: C
卒業難易度: E
授業料 : E(年100万円~200万円)
生活費 : E
授業レベル: A
卒業後進路: A
言語汎用性: A(フランス語、ドイツ語)
欧州でもっと裕福な国の一つです。大学レベルも生活水準も最高レベルですが、物価の高さ、試験の難しさなどを勘案してこの位置です。
10.スウェーデン
入学難易度: D
卒業難易度: E
授業料 : E(年100万円~200万円程度)
生活費 : D
授業レベル: A
卒業後進路: B
言語汎用性: E
ヨーロッパでも最高峰の経済性と大学レベルを誇りますが、入学までが至難なうえ、卒業も容易ではなく、かつ授業料+生活費がのしかかってくる、スイス同様選ばれた人しか留学できない国です。また、スウェーデン語の汎用性も低く、大学の質にとことんこだわりたい人向けです。

番外編. イギリス
あまりにも日本人留学先の定番と化しているイギリスは今回のランキングから外しましたが、無理やり加えるとすると8位~9位前後かと思います。欧州のトップクラスの大学はみなイギリスに集中しており、高い質と卒業後の進路は保証できますが、高い授業料、難しい試験など、スイス・スウェーデン同様、選ばれた人しか進学できない留学先です。
入学難易度: D
卒業難易度: E
授業料 : E(100万円~200万円程度)
生活費 : D
授業レベル: A
卒業後進路: A
言語汎用性: A(ただし英語は必須言語なので、強みになりにくい)

