労働環境の良さ、グローバルに活躍できるチャンスなどを考慮し、最近ドイツでの就職を志す日本人の数が増えています。実際に私もその一人で、現在はドイツ在住、ドイツのメーカーで働いています。
ただ、その探し方となると一苦労で、ましてや日本から探そうとすると、並々ならぬ努力とスキルを要されます。
今回は、そのように日本にいながらドイツ就職のチャンスをうかがう方向けに、どのように仕事を探せばいいのか、など特に私と同世代の20~30代の方を対象に、解説していきたいと思います。
ドイツ就活事情
まず、前もって注意しておかなくてはいけないのは、日本からドイツに応募する場合、地理的にも文化的にも距離があるため、他の応募者に比べてかなりハンデがある、ということです。
ドイツ企業としても、採用するからには内定辞退してほしくないですし、その点、すでにドイツにいる日本人などを優先的に面接したがります。
ただ、もちろん日本にいながらドイツ企業に採用される機会はゼロではありません。以下、詳しく探し方や応募の方法を見ていきましょう。
探し方
探し方に関しては、オフライン、オンラインと様々な方法があります。実際にドイツにいるのであれば、大学の求人チラシや求人メッセなどに赴くことができるのですが、日本にいる際はそれが使えないので、もっぱらオンラインでの就活がメインになります。
インターネット(LinkedIn、Glassdoor等)で探す
一番オーソドックスなのは、インターネット求人を使用することです。有名どころで行けば、Glassdoorなどでしょうか。こういったサイトで、しらみつぶしに勤務地、職種などを調べていく、という方法が、地味ではありますが手堅いです。
実際に、いくつかの求人を調べ、応募をかけてみれば、手ごたえも分かりますし、どのような企業がどのような職種を応募しているのか、という感覚もつかめてきます。
各企業のHPから探す
各企業のHPからも、具体的に応募している職種を探すことが可能です。ただ、上述の就職サイトに比べ、さらにスペシフィックな内容ですので、具体的な会社名や職種が定まっていないと、探すのが難しいという欠点があります。
転職エージェントを使う
ここでいう転職エージェントは、日本にいる転職エージェントではなく、ドイツにいる転職エージェントです。日本にいる転職エージェントは、私も使用したことがありますが、受け持っている案件は基本的に日本国内の案件ばかりですので、海外勤務を希望する場合、あまり実情に詳しくないケースが多いです。
ドイツで日本人人材の斡旋に定評があるのは、以下の2つの転職エージェントです。自分にあった会社に面接まで自動でこぎつけてくれるほか、ビザや税金などの相談にも乗ってくれますので、ドイツに全く知見が無い場合でも助かります。
・Career Connection
・Career Management
友人づて
VitaminBという造語がドイツにはあります。BとはBeziehung(人間関係)のBで、就職には時にコネの力が重要、という意味です。
実際に、ドイツ人友人のコネを利用して、日本人を募集しているドイツ系企業の採用にたどり着くことは稀ではありません。私も、大学院時代、友人のコネで何度か仕事を紹介してもらったことがあります。
そのため、もし日本でドイツ人の友人や、ドイツ人駐在の知り合いがいれば、そのつてをたどって、仕事先を紹介してもらえる、という可能性はゼロではありません。何にせよ、情報のアンテナは広く持っておいたほうが良いでしょう。
必要なスキルは?
以下、ドイツで、ドイツの会社で一般的に年収500~600万円以上の、いわゆる通常のサラリーマンとしての職を求めるときに必要なスキルです。優先順位が高い順にランク付けしました。
- ビジネス英語
- 前職の経験
- ドイツ語
全部同じくらい重要なのですが、まず、英語ができないことには基本的に(もちろん職種によりますが)選考の対象に上がりません。というのも、我々は日本人ですので、ドイツ人が日本人を「ドイツ語ばりばり使うぞ」みたいな営業前線などに送ることはほぼありえないからです。自国でドイツ語ペラペラのドイツ人がたくさん採用できるのに、ネイティブではない日本語をドイツ語の出来不出来で仕事の質に影響がでるような大切なポジションにはつけません。
例えば、私のメインの市場は中国・台湾のマーケティングで、私は中国語ができないので、もっぱら仕事は英語で行います。相手は社外なので、メールなどビジネス英語には非常に気を使います。対して、ドイツ語を使う際、大抵相手は社内の人間なので、対外折衝に比べ、100%完璧なドイツ語を使わなくても許されます。
私の友人の中国人で、10歳のときからドイツに住んでおり、中国語よりドイツ語がペラペラ、みたいな人は、ドイツの法人企業コンサルなどをやっていますが、基本、我々日本人のスキルが活かされる場で必要になるのは英語>ドイツ語、という印象です。
また、前職の経験、成果もかなり重視されます。ドイツの会社としては、わざわざ外国からリスクを冒して日本人を採用するので、それを打ち消すほどの魅力が無いと雇ってもらえません。
なので、「日本の大学に通っています、卒業後はドイツで通いたいのですが」というような希望が通ることは、非常に非常に稀である、ということを強調しておかなくてはいけません。
日本にあるドイツ企業はどうなのか?
ドイツで働く別の切り口として、一度日本にあるドイツの会社で働き、そこでドイツ語を身に着けたり、キャリアアップしてドイツに出向、みたいなやり方も存在します。具体的に、日本で大口採用をしているドイツの会社としてシーメンスやボッシュが挙げられます。
ただ、これらの企業の本質的な目的は「日本市場拡大」です。つまり、社内で使用される言語は基本的に日本語ですし、取引も日系企業、上司も日本人で、日本にローカライズされたやり方になっています。
ここで、ドイツ本社の目に留まり、本社採用に抜擢される、というのは非常に険しい道のりです。
将来何がなんでもドイツで就職したい人のために
最後に、今現在日本に住んでいて、何が何でもドイツで就職したい、という人のためにコツをお教えします。コツはすなわち、「ドイツにある日系企業に就職し、ワンクッションおく」ことです。
なぜかというと、ドイツでドイツの企業に就職したい日本人にとって圧倒的に不利なのが「言語の壁」です。一部の研究職を除き、ドイツの会社では基本的に公用語はドイツ語です。つまり、会議に出たり、社内文書を速やかに理解したりと、ビジネスレベルで通用するような高度なドイツ語が必要になってくるわけです。
この「ビジネスレベルのドイツ語」は、日本に住んでいる限り達成が非常に困難です。例えば、私はドイツ語の勉強を始めて半年で大学の授業についていくレベルのドイツ語の試験に合格しましたが(C1レベル)、そこからビジネスレベルに達するまで、計3年を要しました。
静かな講堂で教授が一方的に話す講義や、ゆっくりと喋ってくれる語学学校の講師のドイツ語と違い、現場で話されるドイツ語は文字通り生きた言語で、時には電話越しに、時にはかつそれを聞き、理解し、聞くだけでなく会話に参加して自分の意見を述べる、というプロセスを経なくてはいけません。
ドイツ語の試験に合格するだけなら日本で勉強していても大丈夫かと思いますが、そこからビジネスレベルのドイツ語に精通するようになるには、現場でのネイティブを交えた演習が必要で、その実践の場は日本には圧倒的に不足しています。
ドイツにある日系企業の支店であれば、ドイツ語が求められることは多いですが、純ドイツ企業よりも、日本人の扱いに慣れている分、ドイツ語も比較的ゆっくり喋ってくれることがありますし、100%ドイツ語だけ、ではないので、実践の場ではあるものの、多少手心の聞いた実践の場、となります。
日系企業であっても、ドイツで数年働けば労働ビザがおりますし、それと、ドイツにいながら生のドイツ語、英語を身に着ければ、将来ドイツの企業に転職することは十分に可能です。
私は今まで「今まで海外で働いた経験ありません、でもドイツで働きたいです」という人で、そこからドイツの企業に直接合格した人は見たことがありません。日系企業の現地採用や、大学・大学院などの留学をクッションとして挟んでからのドイツの企業への就職なら、十分に可能性があります(私は後者の大学院組です)。