ドイツの大学・大学院進学は、日本人の多くが思っているほどハードルが高くありませんが、かといって、無計画に渡航してあとからどうにかなる、というものでもありません。
今回はの記事では、今からドイツの大学・大学院留学を目指している人を対象に、今後どのようなプランを立てればいいのか、ゼロからまとめていきます。
ドイツの大学・大学院への入学
交換留学や語学留学と違い、正規の学生としてドイツの大学院に通うと、随分と物の見方や、将来のパスが変わってきます。
語学力も、ドイツ語だけでなく英語力も洗練されますし、ドイツの教育水準は広く認められているため、将来ヨーロッパ全土で就職できるチャンスが広がります。
ただ、その恩恵を得るためには、しっかりと準備をし、並み居るライバルを蹴落とし、入学許可を勝ち取る必要があります。
この記事では、ある日なんの情報も後ろ盾もなく、ドイツ留学を思い立った日から、どのように行動すればドイツの大学・大学院に合格できるのかをまとめていきます。
計画を立てる
ドイツ留学を思い立って、まず初めにやっておかなければいけないのが「計画立案」です。これが無いと、お金が足りなくなったり、募集要項を満たせずに日本に帰ってくることになってしまいます。
留学費用を貯める
まず、ドイツの大学、大学院留学を考える際に、真っ先に気を付けなくてはいけないのが、「金銭的な余裕はあるか」どうかです。大学に留学中は、収入がストップします。
日本の大学生のように、大学に通いながらアルバイト、というのは、決して不可能ではありませんが、勉強と両立させるのは至難の業ですので、お勧めはできません。同様に、奨学金も狭き門ですので、あまり当てにはできません。
ドイツが推奨する、最低限の月の生活費は700ユーロです(90000円程度)。大学の場合最低3年、大学院の場合2年を、卒業まで要しますので、学費とは別に、生活費を考えた場合、最低でも卒業までに200~300万円、生活費としてのしかかってきます。
これは、あくまで最短ルートで卒業にこぎつけた場合です。途中で休学をしたり、現地の語学学校に通って語学の勉強から始める場合、それに加えて100~150万円は見積もっておく必要があります。
というわけで、ドイツ留学を志すにあたり、まず初めに確認しておきたいのは、300~400万円の貯蓄があるか、なければ、どこかから都合できないか、という非常に現実的な問題です。
卒業まで300万円:ドイツ大学院留学に必要な費用はどれくらい?
留学中にドイツでできるアルバイト一覧
卒業後のキャリアを考える
続いて確認しておきたいのが、大学・大学院進学後のキャリアです。
ドイツの大学・大学院を出たからと言って、無条件にドイツで仕事が手に入るわけではありません。大学・大学院を卒業し、仕事を手に入れるまでは、日本の就活同様、いくつかの志望先で面接をし、自分のPRを行わなくてはいけません。
その際に、自身の強みとなるのが前職の経験です。逆に言うと、それがないと就職の際にディスアドバンテージとなります。
もちろん、新卒で採用という道も多くありますが、社会人を経験してから大学・大学院に行く場合、就職の際にはやはりそれなりの経験が期待されます。
仮に、自身の前職と全くことなるキャリアをドイツで歩む場合、大学でその専門を勉強しなおし、インターンなどを通じて一から土台を築いていく必要が出てきます。
そうなると、日本にいたときよりも給料が下がる、ということも多々あります。ドイツといえば給与水準が高い国のように思えますが、税金で差し引かれる分や、物価水準を加味すると、日本と比べて格段に生活水準が向上する、というケースは少ないように思えます。
そのため、卒業後のキャリアを見据え、本当に自分のやりたいことはドイツでしかできないのか、将来の安定や給与を捨ててまで目指すものなのか、と考えたほうがいいでしょう。
(社会人の場合)退職、渡航などのスケジュールを考える
もしドイツ大学・大学院入学を思い立ったのが、まだ今の会社に在籍しているときであれば、渡航前に、退職などのプランを考えなくてはいけません。
法的には、一ヶ月前からの退職届けが有効ですが、習慣的に、退職の場合、後任の手配などがあるため、直属の上司への通知は3~4か月前にはしておきたいものです。
同様に、借り家がある場合は、そこからの引っ越し、飛行機のチケットなど、スケジュールプランを精緻に立てていかなくてはいけません。
日本から受験し、合格してから渡独するパターンと、先に渡独し、語学学校に通いながら受験するパターンとで分かれますが、例えば、以下は、語学学校に一旦入学し、大学院受験を目指す際のスケジュール例です(語学学校を挟むと、住居の世話はそちらでおこなってくれるため、右も左も分からない状況で渡独する際にはお勧めです)。
渡航半年前 :ドイツの大学(院)留学の予定を立案
渡航3~4ヵ月前:会社の上司への退職通知
渡航3~4ヵ月前:語学学校の予約、飛行機チケットの予約
渡航3ヵ月前 :現在の住居への退去通知
渡航1~2ヵ月前:会社への正式な退職届け
渡航直前 :住民票の抹消、年金手続きなど
渡航直前 :大学受験に必要な持ち物の準備
→ドイツへ!
後述しますが、仮にドイツ語力ゼロの状態から渡独し、語学学校に入った場合、そこから、大学・大学院合格に必要なドイツ語を身に着けるまで、おおよそ1年くらいのスパンを要すると想定してください。
ですので、上記のスケジュールとあわせ、ドイツ大学留学を思い立ってから、大体1年半後くらいには、大学の入学を許可されるような時間間隔です。
留学に向けた具体的なステップ
続いて、この項では、ドイツの大学・大学院合格に向けた具体的な手順を追っていきます。
募集要項を確認する
大学、大学院受験の際に、必ず確認しておかなければいけないのが、募集要項です。といっても、大学(大学院)ごとに募集要項は異なるため、以下、私が推奨する、文系大学院進学のための要件です。
- ドイツ語C1レベル
- 英語B2~C1レベル
- (大学院進学の場合)学部時代のGPAが最低でも2.5以上ある
- (大学院進学の場合)応募したい専攻の勉強を、学部時代におこなったことがある
必ずしもこれらを満たさなくても、応募できる大学・大学院はありますが、これらを満たしておくと、ドイツの公立大学院(学費がほぼ無料)の60%以上は応募できると思います。
あとは、GPAが高ければ高いほど有利になってきます。逆に、日本の大学のネームバリューなどはそこまで加味されません。
英語だけでも受験できる?ドイツの大学院進学に必要な英語力は?
4×4って何?ドイツの大学院進学に必要なドイツ語力は?
募集要項を満たす(語学、職歴など)
上記のうち、GPA関連は自力ではどうすることもできませんので、ここではもっぱら語学関連の底上げを対象にします。
私の場合、ドイツ語力ゼロ、英語力そこそこの状態から、上記の状態にもっていき、合格通知を貰うまで、おおよそ1年程度かかりました。
恐らく、この語学の要件を満たす、という問題は、上述の資金面の問題と合わせ、ドイツ留学のおおきなハードルになっていると思います。
応募する
一通りの語学要件をうまく満たせば、応募できる大学・大学院が絞れてきます。例えば、中にはGMATや筆記試験を要求する大学院もありましたし、そういったところは私は候補から除外しました。
ドイツ人の友人に手伝ってもらい、通っていればそこそこ優秀とみなされるであろう大学リストを作ってもらい、片っ端から応募を行いました。結果、10校ほど応募し、4校ほど合格通知を貰いました。
合格通知、入学手続き
合格通知は、メール、または郵便で届きます。不合格でも届きます。
ただし、合格通知を受け取っただけでは、まだ入学許可はおりません。そこから、期日までに学費を入金し、大学の指定する法的健康保険などに加入する必要があるのです。
ドイツの大学・大学院の担当者は、しばしば長期休暇に入って、音信不通になることがあるので、大学が決まればさっさと手続きをすませてしまいましょう。
住居を探す
一番理想的なのは、大学が運営する学生寮の部屋を手に入れることですが、昨今、外国からの学生が増加しており、加えて難民の問題もあり、ドイツの住宅事情は需要多寡に陥っています。
それゆえ、多くの場合で、学生寮は期待できないと考えておいたほうが良いでしょう。
代わりになるのが、WGと呼ばれるフラットシェアや、ちょっと値は張りますが、個室のアパートなどです。特に、学期初めの時期は、多くの学生が町を離れ、探しやすくなるのと同時に、多くの新入生が町に流入して、カオスな状態になりますので、早め早めに行動しておかないと、ホテル暮らしという最悪の状況に陥ってしまいます。
後述する、ビザの申請には定住できる住所が必要になってきますので、ここで住居を確保できるかは、割と死活問題になってきます。
学生ビザの取得
大学に入学すると、Immatrikulationsbescheinigungという在籍証明書を支給(もしくはオンラインで印刷)されます。それと、健康保険などの証明書をもって、市役所でビザの申請を行います。
基本的に、大学生であれば問題なくビザの取得は可能です。ただし、ビザの申請から取得まで最低1ヶ月かかりますし、場合によっては書類の不備などで遅延も見込まれるため、早めに処理してしまいましょう。
以上で、ドイツの大学・大学院入学のステップ紹介は終了です。各セッションに、詳細につながるリンクを貼ってありますので、それぞれの情報を深堀したい場合は、一度目を通してみてください