【批評】ドイツの日系企業での現地採用はキャリアアップとしてアリか

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中小含め、JETROにカウントされているだけでも1,500以上の日系企業がドイツに居を構えています。EPAの成立、イギリスのEU脱退などに伴い、今後日系企業におけるドイツの立ち位置はますます重要なものになっていくでしょう。

今回は、そんな「ドイツの日系企業での現地採用」をキャリアの一つとして考えてみることにしましょう。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
ドイツ在住歴5年、在独日系企業でもドイツ企業でも勤務経験があります。僕の経験をもとに、両者のメリット・デメリットをまとめていきます。

現地採用ってなに?

そもそも現地採用とは何でしょうか?明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、「本社以外の場所で採用されること」と解釈されています。

ですので、ドイツにある日本企業で採用されると、それは立派な現地採用ということになります。

さて、この現地採用、以前までは現地人と結婚し、ビザの心配もなく、かといって家にいても暇を持て余している日本人主婦などのアシスタント業務などが対象だったのですが、global mobilityの変化に伴い、現地採用の日本人に求められる仕事の質も少しずつ変化してきました。

語学力や現地人とのコミュニケーションスキルを買われ、現地マーケットの開拓や、マーケティング、コントローラーとしての役割から、経歴次第ではいきなり支社のマネージャーを任されるような
ケースも出てきました。

海外に来てまで日系企業で働く、というとちょっと抵抗がありますが、役割の変化に伴い、最近では海外移住者に注目されるキャリアステップの一つになりました。以下、現地企業で働くのと比較し、日系企業の現地採用にはどんなメリットがあるのか、見ていきましょう。

メリット

日本語が通じる・日本文化が通じる

まず、日本語が社内で使える、というのが最大のメリットになってくると思います。特に、本社との連携が日本語で行えるのは、コントロールの上での齟齬を最小限に食い止めます

ドイツ企業に入ると、とにかく日常のコミュニケーションは全てドイツ語で、文化も全く異なる(メール確認がなく、電話で済ませる)ため、ドイツ語に慣れない状況で入るとかなりトラブルを招きます。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
言語だけでなく、「文化が日本っぽい」というのはやはり日系企業の大きなメリットですね。もちろん、日系企業の中には50年以上ドイツで拠点をoperateして、すでに完全にドイツ文化っぽくなってしまった日系企業もありますが。

安定している

小さい事務所などならともかく、大手メーカーの現地採用などであれば、本社採用とは比較できませんが、それでも他のドイツやフランスの外資企業と比較し安定した職が得られます

特にドイツ企業の場合、成果と雇用は常に並行関係にあり、成果が出ないと首切りの対象になりやすいのですが、日系企業の場合、良くも悪くも、長期的な目線で教育を行ってくれます。

また、ドイツ企業で「日本語要員」として雇われた場合、その企業が日本市場撤退を決めるとクビになってしまうケースも少なくありません。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
日本的な長期目線での人事評価、というのは在独日系企業にあっても根付いています。人材ではなく人財、っていう、日本独特の古風な文化ですね。

日本での職歴が活かせる

日本で仕事した経歴があるものにとって、やはり日系企業はそうした「日本人との仕事の実績」を高く評価してくれます。対して、ドイツ企業の場合、日本市場などと関係がない場合、それらの実績がリセットされ、また一からやり直しになってしまうケースも少なくありません。

日本で働いていた人がいきなりドイツの会社に転職するのは、野球選手が投手から打者に転向するようなもんですね。元ファイターズの糸井のように今までの経験がうまく引き継げる部分もあれば、全く引き継げないケースもある
森本(スウェーデン)
森本(スウェーデン)

デメリット

もちろん、メリットがあればデメリットもあります。私が最終的に日系企業の仕事を辞め、ドイツ企業で働くことに決めたのは、以下の理由がありました。

権限・キャリアアップが限定的

まず、ドイツ支社自体、日本本社のコントロール下にあり、行える業務内容は限定的です。かつて日本企業の海外支店は傀儡政権だと揶揄されたころと比べると、現地支店の役割も徐々に変化してきて、マシになってきたとはいえ、まだまだ権限の面では不自由があります。

また、現地採用組のキャリアアップも限定的です。将来のキャリアとして見込めるのは、現地支店でマネージャーやマネージャーアシスタントのような道がありますが、他の支店での業務を経験したり、そこからさらに別の国の駐在を経験したり、というようなダイナミックなキャリアは中々見込めません。

ただ、この部分に関しては、時代の流れとともに変わってきたようで、会社の中には、現地で育った外国人を本社に招聘し、最終的に役員にまで成り上がった、というようなシンデレラストーリーも聞きます。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
在外日系企業におけるキャリアアップの壁は「薄くて厚い和紙の壁」として揶揄されてきました。この、駐在員が圧倒的なパワーを握る、というシステムは、今も根強く残されているところがあります

駐在との比較

現地採用組の日本人の方に伺うと、ストレスになってくるのは、駐在員さんとの待遇の違いです。方や、本社からの出向で来ていますので、駐在手当や住宅手当が付き、貴族さながらの生活ができます。

方や、現地採用となると、仕事の量や質では本社組と同じレベルが求められる一方、給料は現地水準になりますので、やはり不満が募ってくるとのことです。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
休日の野球大会や、ゴルフ、この辺も日本人だからという理由で駆り出されますが、実際に駐在手当がついているわけではないですし、ちょっと不公平を感じますね。

日本的な仕事文化

ドイツ企業ではお目にかからない、休日出勤、残業、上司との勤務後のコミュニケーション、といった日本的な文化が、日系企業には存在します。表向きは、日系企業でも現地採用の場合、年間30日の有給休暇が与えられるのですが、実際にそれを全部使えるかは、難しいところのようです。

また、残業に関してもドイツ企業の場合17時には自宅に帰れるホワイトな仕事文化ですが、日系企業にあってはやはり日本的な「残業」文化が根強く残されています。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
日本で働いていた時よりは若干残業の傾向は少なかったものの、やはり繁忙期など「忖度」させられることはありました。。

結論

もちろん、ドイツ企業で働くにしろ、日本企業で働くにしろ、メリットデメリットが存在し、どちらがおススメ、とは一概には判断できません。中には、日本企業よりも働かなくてはいけないドイツ企業もありますし、それは個社個社によって異なるでしょう。

ただ、上述のように、時代の流れに伴い、現地日系企業と、そのキャリアの方法も変化しつつあります。中には、現地採用組に駐在並みの待遇を用意している日系企業もあるようですし、今までのような「一生平社員」のキャリアプランから脱却しつつあります。

例えば、ドイツにあるCareer Connection社などがドイツの日系企業を中心にリクルートを行っていたり、Career Management社などはブログなどを通じドイツ語履歴書の書き方やテンプレート、面接作法などを公開しており、得られる情報は豊富です。

そういったサービスが充実してきている今日、もしドイツなどにきて、職を探す場合、ドイツ企業だけにこだわらず、一度、日系企業現地採用の可能性も考えてみてはいかがでしょうか。

村上(ドイツ)
村上(ドイツ)
やはり、ドイツの中でも日系企業の存在感はひと際大きく、仕事を探すとなると色々な面で助けられる点も多いです。
一生そこにいるかどうかは別として、いっぺん試してみるつもりで受けてみるのもいいかもしれませんね。
森本(スウェーデン)
森本(スウェーデン)

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