大学の第二外国語で何を選ぶか、などは割と慎重に考える学生の方が多いと思います。実際に、どの外国語を履修しておけば便利なのか、就活で有利なのか、など。
今回は、具体的に、ドイツ語を習得していて便利な就職先について、色々な市場を交えてまとめていきたいと思います。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]こんにちは、ドイツ在住歴5年、ドイツ語ペラペラの村上です。今回は僕の経験から、ドイツ語が話せると国内外でどれだけ就職・転職の機会があるのかを教えます。[/word_balloon]
ドイツ語と就活戦線
まず、ドイツ語の基本情報です。
世界中で9,000万人が母国語として使用し、世界中で3億人が会話に使用している言語で、欧州言語の中では、母語としては一番の人口を持つ言語です。
話されている地域は、ドイツ、オーストリア、スイスですが、他にも、イタリアの一部や、ポーランドなどでは、英語よりもドイツ語が堪能、という人も少なくありません。
特に、上述のとおり、ドイツ、オーストリア、スイスという、欧州でも有数の裕福なエリアを含むため、DACHエリアと呼ばれ、欧州のマーケットの中ではかなり重点を置かれています。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]もちろん、国によって多少のアクセントや語彙の変化は伴いますが、基本的に同じ「ドイツ語」であることに変わりはありません。[/word_balloon]
[word_balloon id=”3″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]オーストリア人のドイツ語はドイツ人の使うドイツ語とはちょっとだけ違うわね。例えばドイツ人は椅子のことをStuhlと呼ぶけど、オーストリア人はSesselと呼ぶわ。[/word_balloon]
ただ、これはあくまで欧州の事情であって、世界的に見れば、話はまた変わってきます。日本ではどうなのか、その他の国で就職した場合どうなのか、など、国によって、ドイツ語の持つ価値は大きく変わるのです。
そのため、以下、3つの就活市場(ドイツ、ドイツ以外の外国、日本)から、ドイツ語の持つ就職における価値を見ていきたいと思います。
ドイツ内での就職
ドイツ内での就職といっても、いくつかパターンが存在しますので、それぞれパターン別に、ドイツ語の求められる度合いを分けていきましょう。
ドイツの会社で働く
まず、ドイツで就職する際に、ドイツの会社を選ぶと、ドイツ語が必要と見なされる会社がほとんどです。その場合、日常会話レベルではなく、「ビジネスレベル」での流暢なドイツ語が求められます。
- 「Grammatikalisch korrektes Deutsch im mündlichen und schriftlichem Ausdruck sowie gute Englischkenntnisse in Wort und Schrift (読み書きにおいて文法的に正しいドイツ語、英語)」Deutsche Bahn求人
- 「Fließendes Deutsch- und gute Englischkenntnisse(流暢なドイツ語、および英語)」DHL求人
例えば、上記の2例は、ドイツ内の求人の応募要項からの抜粋ですが、英語、ドイツ語が求められているのが分かります。
ビジネスレベルとは、資格で言えば「TestDaf4x4」、「DSH2」、「ゲーテ試験C1」などが、いわゆる流暢なドイツ語、と見なされるレベルで、それに加え、ドイツの会社でのインターンや、ドイツの大学に通った経験なども加点対象となります。
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ちなみに、日本と違って、ドイツでは、会社勤めの人間はほとんどすべてと言っていいほど、英語が話せます。
にもかかわらず、応募者にドイツ語レベルが求められるのは、社内での公用語がドイツ語であり、システムなど、社内メールもドイツ語、会議もドイツ語なので、わざわざチーム内に1人や2人外国人がいて、彼らのために全社内の公用語を英語に変えるだけのメリットがないのです。
職種にもよりますが、そのため、ドイツでドイツの会社に就職するとき、ドイツ語が求められる、というのは、社外折衝ではなく、社内折衝に使われることが多い、というのがポイントです。
ドイツの会社は、ドイツの営業先に対して、基本的にネイティブのドイツ人を使ったほうが得なので、わざわざ日本人である我々が、そういった役割を任されることは滅多にありません。
大学も、大学院もドイツを出ていて、ドイツ語が超完璧、といったケースの場合、ドイツ内の営業に回されることもありますが、あまり聞きません。
別枠として、理系、R&D施設などでは、ドイツ語ではなく、英語が公用語の会社もあります。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]純ドイツの会社で働くと、社内公用語は全てドイツ語です。みんな英語も話せますが、ドイツ語が優先されます[/word_balloon]
[word_balloon id=”3″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]確かにドイツの会社で働くとき、ドイツ語はほとんどの場面で必要になるわ。メールのやり取り、会議、他社との打ち合わせ等、社内の外国人一人のために英語で進めてくれることは稀よ。[/word_balloon]
外資系の会社で働く
ここでいう外資系は、つまり、ドイツにある、ドイツ以外の国の資本の会社です。具体的には、本社がアメリカとか、本社がイギリスとか、そういったケースを想定します。
外資であっても、ドイツに支社を置いているものは、基本的に公用語はドイツ語になります。これは、例えば日本にある外資系の企業が、日本でどのようにシステムを構築しているか、を思い浮かべていただければ分かりやすいかと思いますが、ゴールドマンサックスやシーメンスの日本支店でも、一般職間では、英語やドイツ語ではなく日本語が使われているのと同様です。
ただ、本社との折衝などになると、英語や、その外資系企業の本社の公用語が必要になってくると思いますが、基本的には、上述の「ドイツにあるドイツの会社」同様、公用語がドイツ語、プラスで英語が必須、のようなイメージです。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]ドイツにある外資系(アメリカ系)などで働く場合、主要顧客はドイツ人になるので、むしろより完璧なドイツ語が求められるケースが多いです。[/word_balloon]
日系の会社で働く
ちょっと特殊なのが、ドイツにある日本の会社です。日本の会社は、伝統的に本社色が強いため、支店の社長などには、日本人が就いていることが多いです。
そのため、社内公用語は英語、ただ社内の付き合いの多くは日本語でなされたりします。
その日系企業の目的がドイツマーケットの開拓、等の場合、社外の代理店との折衝などで、ドイツ語が求められるようになりますが、求人的にも、今まではそう多いケースではありません。
ただ、イギリスのEU脱退で一部日系企業の欧州HQ機能がドイツに移ったりと、日系企業の中でもドイツ語の話せる日本人人材を求めるような傾向が、次第にではありますが高まっています。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]ドイツにある日系企業で働く場合、ドイツ語を話すのはドイツの代理店やドイツ人の同僚などとの折衝で、上の二つに比べ難易度は低いですね。[/word_balloon]
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海外での就職(ドイツを除く)
さて、続いて、ドイツ語をビジネスレベルで話せる場合、海外ではどのような求人、求職チャンスがあるのでしょうか。
ドイツの会社で働く
ドイツに近い国、ポーランドやチェコなどでは、ドイツ資本の支店が多く設立されています。例えば、ポーランドなどは、歴史的には何度もドイツに苦汁を舐めさせられていますが、ビジネス的なつながりで言えば、欧州随一といっていい、ドイツ語人材に力を入れている国になります(ちょうど、日本と韓国のような関係だと思いますが)。
ですので、ポーランド人の中にも、ドイツ語が流暢なものが多く、そういったものは、地元のポーランド企業よりも、給与水準の高いドイツ系企業に流れていきます。
というわけで、ドイツ以外に点在するドイツの会社でも、本社との折衝などでドイツ語人材が必要とされることが多いのですが、基本的には、現地人が好まれるため、我々日本人がドイツ語を習得したからと言って、他国のドイツ系企業で働けるチャンスが広がるか、というと、そこまででもありません。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]日系企業が東南アジアに多く支店を持っているのと同様、多くのドイツ系企業が東欧や南欧に支店を持っています。こうした企業での就職のチャンスは、ドイツ語が話せると格段に向上します[/word_balloon]
[word_balloon id=”2″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]ウクライナでも、エリートのウクライナ人はキエフなどに進出しているフランス、アメリカ、ドイツ、イギリス系の企業に勤めることが多いわね。[/word_balloon]
現地の会社で働く
ドイツを含むドイツ語圏(俗にいうDACHエリア、ドイツ、オーストリア、スイス)は、欧州随一の経済圏で、このマーケットを開拓したい、というドイツ以外の欧州企業の数は少なくありません。
私も、Linkedinに登録していると、年中、イギリスやポーランドの企業から「DACHエリア担当のマーケット部門を探してるんだけど、求人に興味ある?」と声がかかります。
私はドイツの大学院に在学中、一度インターンで、ドイツマーケットを担当する会社で働いていましたが、そういった機会に恵まれることが多々あります。
ただ、欠点としては、別に我々はネイティブではないため、ドイツ語単体の競争力だと、ネイティブのドイツ人に負けてしまいます。
DACH+極東マーケットとか、そういったマーケット担当ならフルに持ち味が活かせるのですが、この2マーケットを同時に担当させてくれるような企業となると、中小企業になってしまいます。
日本での就職
さて、最後に、ドイツ語を持っていたら、日本の就活戦線での価値は上がるのか、という点について見ていきましょう。
新卒採用の場合
ご存知の通り、日本の新卒採用は、即戦力ではなく将来のポテンシャルや性格面を見ることに重きを置きます。ですので、当然、在学中にドイツ語ビジネスレベルまで上達させたぜ、という実績があれば、それは無茶苦茶高評価ですが、ひとえに、ドイツ語がすごいからでなく、その努力が認められたのであって、恐らく、企業側からすれば、フランス語だろうとスワヒリ語だろうと良い気がします。
私も、知り合いで何人か、日本の大学に在学中にドイツに交換留学をし、ドイツ語がかなり堪能になった日本人を知っていますが、それが理由で、入社後即ドイツに飛ばされたりとか、ドイツの全マーケットを担当させられたり、といったようなことは滅多に聞きません。
ですので、新卒採用の場合、ドイツ語が話せる、というスキルは高評価だとは思いますが、必ずしもドイツ語でなくても良い気がします。
[word_balloon id=”5″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true” avatar_hide=”false” box_center=”false”]日本の場合「ドイツ語限定!」で必要になるケースって稀だと思います。大抵は、英語、中国語辺りで、社外交渉で英語が使われるドイツ人とのビジネスの場合、ドイツ語ではマストではありません。[/word_balloon]
転職の場合
転職市場の場合、ポテンシャルよりも、即戦力としての実力が期待されるため、ドイツ語の生の需要に近いのではないかと思います。
さて、私の知る限り、転職市場でドイツ語をビジネスレベルで求める日本の会社はそう多くはありません。
大きな理由の一つに挙げられるのは、上述した通り「ドイツ人は英語が話せる」のです。それも、我々よりも堪能に。
これは、南米の公用語であるスペイン語・ポルトガル語や、10億人の市場をかかえる中国語との大きな違いです。経済的に成熟したDACHエリアの住人のみなさんは、ドイツ語でなくては絶対ダメ、とは言わないので、会社側としても、市場に少なそうなドイツ語人材探しにそこまで躍起になる必要がないのです。
実際に、私もドイツの会社で働きつつ、日本での市場の評価が気になるので、たまに求人に申し込んでみたりしますが、ドイツ語が必須、というより、英語のほうを買われる頻度のほうが高いように思えます。
もちろん、眼を皿のようにして探せば、ドイツ語人材募集!みたいなスペシフィックな求人も見つけられるかもしれませんが、逆にいえば、そんくらい力を入れないと見つからない程度の、たかが知れている需要、だということです。
ドイツ語が堪能なら、どこで自分を高売りできる?
さて、最後にまとめです。
個人的には、ドイツ語がビジネスレベルでできるのであれば、まず、一番評価してくれるのは、「ドイツに進出している日系企業の現地採用」だと思います。彼らは、多くの場合、日本語+ドイツ語(+英語)を求めているため、いつもどこかしらが応募をかけている状況です。
給与水準では、駐在さんは駐在手当をもらっているので比べるとちょっとそんな気がしますが、自分のキャリアレベルでドイツの企業を受けると、基本的にはワンランク下がるようなイメージの気がします。
続いて、ドイツ国内にあるドイツ系企業も、需要さえあれば重宝してくれますが、最近ではドイツ語の堪能な外人(韓国人、中国人)も増えており、ただドイツ語が堪能、というだけでは、そんなに評価されないこともあります。
最後に、日本の就活市場でも、ドイツ語が話せれば、どこかしらは高く評価してくれるところがあると思いますが、母数が多くないので、転職の場合、割と気の長い就活になる可能性もあります。
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