ヨーロッパに興味がある人でも、一部の人を除いてチェコが第一志望の人はほとんどいないんじゃないでしょうか。ネームバリュー、GDP水準、イメージなど、あらゆる点で一見すると、ドイツやイギリスのような欧州の一流国家になんとなくひけをとっている感じがします。
そんな皆さんのため、今回は、日本人がチェコに留学する魅力についてまとめていきたいと思います。

僕がチェコを選んだ理由
自己紹介でも少し書きましたが、私はチェコの大学を卒業し、今はプラハで正社員として働いていますが振り返ってみると自分の経歴は完全にアウトサイダーになっていました。私は日本で適当にニート生活をしつつ英語を勉強していました。
30歳で大学に行きなおそうと思った時、チェコは選択肢の片隅にも無かったのをよく覚えています
そんな自分が、最終的にチェコの大学を選択し、進学した理由を書き綴っていきたいと思います。

理由その1:生活費
まず第一に、チェコが選択肢になった理由はお金、つまり生活費的な部分です。ヨーロッパの中で、ある程度大学のクオリティとその国のGDPって、相関関係にあると思うんですが、やはり、欧州の中の超一流の大学となると、イギリス、ドイツ、スイスなど、物価も高い国が多いです。
一方、私は日本で30歳近くまでニートを何年も続けていたため、そうそうまとまった資金が無かったのが、第一にチェコを選んだ理由です。
本当はスウェーデンやノルウェーで勉強したいと最初は思っていましたが、どちらも生活費は高く、スウェーデンは2011年よりEU市民権を持っていない学生に対しては授業料を導入しています。
ノルウェーは今だに外国人に対しても授業料は無料でも生活費が高すぎて選ぶことは到底できませんでした。


生活物価
生活に必要な物価水準を見るに、チェコは、西欧と東欧の中心という絶妙なロケーションもあいまって、非常に魅力的です
例えば、プラハでケバブを食べると大体300円〜400円ぐらいですが、オスロでは1000円近くします。
ビールなどは、一杯100~200円で飲むことが可能で、水よりも安いといわれています。ちなみに、ノルウェーでビール一杯飲むと、1200円くらいします。
市内の交通も、一ヶ月、三ヶ月の定期券を購入すれば、月々の支出は2000~3000円で抑えることができます。
というわけで、チェコ(プラハ)の物価水準は、貯金も、現地でアルバイトをしてお金を稼ぐ手立てもない私にとって、かなり魅力的なものでした。
家賃
付け加えて言えば、プラハは首都ながら、家賃がそこまで高額でないことで有名です。
例えば、チェコでは大学の寮に入ると1ヶ月の家賃が一万円ちょいぐらいからあり、快適とは言えませんが水道光熱費も込みなので学生には非常にありがたいです。

フラットシェアリングや、アパートの個室を借りようとすれば、ロケーションにもよりますが、30000円~40000円の水準です。
ドイツなど西欧諸国では、同規模の部屋を借りるのに最低でも300~400€(4~5万円)がデフォなことを鑑みるに、かなり学生にとってフレンドリーだとみなせます。
ちなみに、自炊など地道な努力を行った結果、私の月々の生活費は、家賃込みで5~6万円におさえることができました。
理由その2:大学
さて、続いてチェコを留学先に選んだ理由が、大学の質です。いやいや、大学の質ならイギリスとかドイツの大学行ったほうがいいんじゃないの、という声が聞こえてくるかも知れませんが、上述の通り、私は何年間もニートをやっていた立場の人間です(自慢できないですが)。
そんな日本社会の闇を顕現させた私のような人間が、イギリスなどいわばエリートの集いのような大学に行ったところで、落ちこぼれるに決まっています。
というわけで、あくまで、自分の経歴や英語能力など勘案し、身の丈にあった大学を探した結果、チェコに落ち着いた、ということを強調しておきます。


大学のクオリティ、カリキュラムの充実性
上述した通り、クオリティやカリキュラムを勘案すれば、オックスフォードやケンブリッジ、ミュンヘン工科大学辺りで就学できれば最高です。ただ、それは、超底辺都立高校出身の私が、東大京大に入りたいとのたまうようなものですので、当然、身の丈に合った、という考え方をしなくてはいけません。
以下の記事でも触れていますが、チェコという国は、ぎりぎり西欧(ドイツ、フランス、イギリス)の仲間入りできないまでも、東欧の大学ほど質が悪くもない、なんとも微妙な立ち位置に屹立しています。
というわけで、大学のクオリティや、選べるカリキュラムの豊富さを勘案すると、イギリス・ドイツ水準ではないにしろ、そこまで悪い選択肢でもない、というのが、チェコの大学の魅力です。

ちなみに、私はビシネスを勉強したかったため、そのようなカリキュラムを用意している大学を国単位でしらみつぶしに調べていったのですが、チェコのカリキュラムを見るに、ある程度、自分のやりたい「ヨーロッパ的なビジネス」を勉強するのに適していると感じました。
例えば、他の国では「ビジネスとは何か」という、超一般論的なカリキュラムを導入しているところもありますし、それでは卒業後、中々使い物になる知識ではないと判断しました。
専門性、カリキュラムの質などを加味するに、チェコの大学は、まさに西欧と東欧の境目、一流と三流の間に位置しているようなものだと考えます。
学費
上述した通り、ニートだった私にとって、費用の問題は大きなポイントでした。
私が合格したのはチェコの私立大学でしたが、それでも、年間の学費は30万円かからない程度(国立ならもっと安い)で、日本の私立大学の3分の1程度かと思います。
逆に、欧州内で比較し、学費が高い国はイギリス、スウェーデン、デンマーク、オランダなどです。
上記の国は年間の授業料が100万円を超え、特にイギリスの学費は非常に高くなります。
例えば政治科学でトップ50に入るLondon School of Economicsの年間の授業料は19,000ポンド以上、これは260万円以上になります。
東へ行けば行くほど大学の学費は安く、ルーマニアは年間約500ユーロなのですが、授業の質や卒業後の生活水準は推して知るべしです。
実は西側諸国でも学費の安い国がいくつもあります。
ノルウェーやドイツは学費が無料ですが、英語で学べるプログラムが非常に限られていたりします。
他にもイタリア、スペイン、ポルトガル、ベルギー、オーストリアなども年間の学費が大体2,000ユーロ程ですが英語となると選択肢がだいぶ限られます。

言語
チェコ語とは、非常にマイナー言語です。世界中でも、チェコ語を母国語としているのはチェコしか存在せず、それゆえ、チェコ政府としてもその存続を危うんで、色々と、チェコ語の勉強者に対して特典を設けています。
例えば、私の勤めているフランスの会社では、どこから費用が捻出されているのか分かりませんが、毎月、言語補助費として、チェコ語を勉強したい場合、5000円まで語学学校に通う費用を負担してくれます。
マイナー言語であるがゆえの長所とは、別に自分がチェコ語を話せなくても、誰も気にしない、ということです。フランスやドイツで済む場合、その国の言葉を話せないと、ちょっと蔑んだ目で見られますが、チェコ人の場合、チェコ語がマイナー言語であると理解しているため(自嘲気味に)、逆にちょっとでも挨拶がチェコ語でできると喜ばれる始末です。
また、チェコ語がマイナー言語だと自覚しているため、大学のプログラムも英語で行われるところが多く、その点、母国語話者の多いドイツやフランスに比べて、門戸が広かったです。

交換留学(エラスムスプログラム)
これは絶対条件ではありませんでしたが、大学を選ぶ上でやはり判断の一つになりました。EUは加盟国の統合促進政策の一つとしてErasmusプログロムという名で交換留学を推進しています。
正確にいうとEU加盟国+ノルウェー、アイスランド、などのEU単一市場参加国、更にトルコなどの加盟候補国も含めたヨーロッパの大学で正規の学生は国籍を問わずEUから補助金をもらって交換留学に行けます。
要は日本人でも正規の学生であれば行けるというわけです。さらに言えば、各大学が交換留学の協定を結んでさえいれば補助金が出るので条件は比較的簡単でした。
これは各大学のホームページにどこの国のどこの大学と交換留学の協定を結んでいるか確認できます。端的にいうと、新しい大学や、評価があまり高くない大学、規模があまりに小さい大学はこの協定をあまり結べていません。
逆に古い大学や評価の高い大学、国立大学などの大規模校になると交換留学に行ける選択肢は増えます。
ただ交換留学は人気でたくさんの学生が申し込むので、大学の規模が大きくなればなるほど競争も激しくなります。
交換留学の協定をたくさん結んでいる大学、特に私はオランダに興味があったのでオランダの大学と協定を結んでいる大学は私にとって魅力的でした。
実際に、私は裏技的に、チェコの大学の学籍を保持しつつ、オランダの大学に学費を払わずに、この交換留学制度を利用して、オランダで1セメスター生活しました。
理由その3:交通が便利
二つの側面から、交通の利点を説明しようと思います。
ヨーロッパの中心地
まず、チェコという国自体、中欧と呼ばれるだけあって、欧州各国へのアクセスが非常に便利です。
地理的要件に加え、シェンゲン協定国であるため、格安バス、LCCなどを利用すれば、シェンゲン内を格安で旅行することが可能です。例えば、ドイツ、オーストリアにはバス、電車で15ユーロ程で簡単に行けちゃいます。
頻繁に日本に帰りたいとか旅行しようと考えていたわけではありませんが、やはり移動のしやすさ、日本へのアクセスしやすさは勉強する国、生活する国を選ぶ上で影響しました。
というわけで、旅行が好きな方、いろんな国に観光したいかたは、ロケーション的にチェコは絶好のポジションです。


プラハ市内の交通
続いて、プラハ内の交通の便利さが挙げられます。
例えば、プラハの空港はプラハ市内にあるので定期があれば追加で費用がかかりません。さらにプラハはナイトバス、ナイトトラムが充実しているので、プラハ市内に住んでいるのであれば24時間いつでも家、中心部、そして空港にアクセスすることができます。


理由その4:チェコは治安がいい
日本では知られていませんが、チェコの治安は欧州随一です。例えば、リンク先のような統計資料を見ると、ドイツよりも治安がいいことがうかがえ、フィンランド、デンマークなど北欧諸国と遜色有りません。
また、差別意識など、東欧諸国でよくみられるアジア人嫌悪の感情も、チェコではあまり見られず、穏やかな日常を送っています。
ちなみに、この前ドイツに週末を利用して旅行したら、パスポートを見せろと言って頭をつかまれました。チェコに4年住んでいて、このような経験はいっさいありません。


理由その5:卒業後の進路
さて、チェコの失業率は、他の欧州各国と比較しても、実は非常に低い水準にあります(あまり知られていませんが)。それゆえ、フランス人やドイツ人など、母国で職がなかった学生や卒業生などが、仕事の機会を求めてチェコにやってくる、という現象が起こりつつあります。
原因の一つには、外資の増加と、それに伴う国内の景気水準の改善が挙げられると思います。ここ数年で、プラハ市内だけを見ても、次第に物価水準が高まっていくのを感じました。
さて、そんなわけで、当時、大学を決めるにあたって、欧州に永住したいという気持ちの強かった私は、できるだけ、卒業後も仕事が見つかりそうな国を重点的に調べたことを覚えています。
また、仕事の見つかりやすさだけでなく、給料水準なども勘案しました。極端な話、リトアニアなどでも仕事は見つかりますが、マクドナルドのバイトが時給100円の世界のため、将来のキャリアを積む国として、不適切だと判断しました。
そんななか、フランスやドイツから地理的にも文化的にも近く、かつ就活売り手市場と化しているという事実が、私の大学選びの一つの原因にもなりました。


理由その6:チェコ人女性は可愛い
最後に、ものすごい私的な理由になりますが、チェコの女性は可愛い、というのが最後のひと押しの原因にもなりました。
歴史的にも、地理的にも、西欧と東欧の境目に位置しているとあって、人種的にもバラエティに富んでおり、日本人好みの可愛い女性が、ドイツなどゲルマン系と比較すると多いように思います。
また、親日とまではいかないものの、日本に対する好感度は高く、バーなどにいくと度々声を掛けられます。
ちなみに、トランプの大統領の娘、イヴァンカ・トランプさんのお母さんは、チェコスロバキアの出身です。
チェコ人以外にも、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアなど、元共産圏の女性が数多くプラハには暮らしており、統計データではプラハに住む外国人の4人に一人はウクライナ人です。

チェコに来たことを振り返ると
チェコに来る前はここでの生活がどうなるのか、勿論不安もありました。
外国人警察等の役所での手続きは難しいこともあり、心が折れそうな時もありましたが、仕事も手に入り大学卒業後もヨーロッパで生活ができているので結果チェコに来れて良かったと思っています。
正直に私が仕事を手に入れた理由を言うと、チェコの景気が良かったから、チェコで日本語の需要があったからになります。
日本人にとってチェコは馴染みが無く、小さい国で印象の薄い国のように思えますが、チェコ語ができなくても生きていける、非英語圏でも英語で勉強や仕事ができるということをここで発信していく予定です。
将来に悩んでいる人、進学をどうするか困っている人、ワーホリでどこに行こうか考えている人、英語を学びたい人、海外に住んでみたい人に「こんな選択肢があるんだ!」と言うことを届けられたらいいと思っています。
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