【保存版】ドイツの労働契約書の見方!なぜドイツの会社は借金の有無を確認するのか?

まだ人間らしさの残る日本の会社と違い、ドイツのビジネスフィールドは完全なる契約書社会です。それゆえ、労働者と雇用者とで、何か問題が発生した場合、契約書の規定をもとに問題解決が行われます。

これは、契約書文化に馴染みのない我々日本人にとっては落とし穴で、ドイツの会社で働く前にこの契約書内容を確認しておかないと、トラブルのもとになってきます。

ドイツの会社で働く:面接から契約書まで

日本のような新卒一括採用文化と異なり、ドイツの採用プロセスはオーダーメイド形式です。つまり、大卒〇〇円、のようにみなに平等に賃金が公示されているわけではなく、個人の力量、経歴などをもって、各々の賃金が決定されます。

おおよそ、賃金や休暇内容などは、面接の際にすり合わせが行われます。ただし、ここでの同意は、法的拘束力を持ちません。実際に、雇用者、労働者ともに労働規定を履行する拘束力が発生するのは、契約書に「雇用者」および「労働者」のサインがなされた瞬間からで、それ以前の口約束は意味を持ちません。

逆にいえば、サインをしてしまうと、その労働条件は法的効力を持ってしまいます。そのため、ドイツの会社で働く際には、必ずサインをする前に、契約書の内容をよくよくチェックしておかなくてはいけません。

契約書のどんなところに目を通す必要がある?

ただ、契約書と言っても、ドイツ語で、しかも法律用語がずらりと並び、とてもではないですが、全部に目を通す気にはならないでしょう。

以下、私の経験をもとに、契約書のどんな箇所に注意しなくてはいけないか、まとめていきたいと思います。

告知期間(Kündigungsfrist)

日本では、退職者は退職の2週間前までに雇用者側に伝えることで、会社を退職することが可能です。ドイツの場合、基本的に個々の会社ごとにこの告知期間が設けられており、それゆえ契約書の段階で必ず目を通しておく必要があるのです。

逆もしかりで、雇用者側がどれくらい前までに通知すれば、労働者を首にできるか、という期間も契約書に盛り込まれているはずです。

そのため、例えば雇用者側は2週間前に告知すれば首にできるのに、労働者側は3ヵ月前から通知しなくてはいけない、といったような不利な条件の場合、もうちょっと突き詰めたほうが良いかもしれません。

また、同じ章に、大抵「Probezeit(試用期間)」の取り決めが書かれています。試用期間というのは、本採用になるまえの期間のことで、法的には、この試用期間が終わり、雇用者側は契約を本採用に移行させるかどうかの判断を行うことが可能です。つまり、この期間内にパフォーマンスが悪いと、そのまま半年で首になることもあります。

なぜこんな面倒な制度をとっているのかというと、ドイツを含めた西欧諸国は、労働者天国と言われ、一度本採用してしまうと、首を切るのが難しくなるため、本当に見込み通りの成果を出してくれるのか、最初の半年で判断しよう、というわけです。

この試用期間中の給料は、本採用時と多少異なる場合があるので、注意しましょう。

給料(Vergütung)

私の場合、採用面接の際に、まず年収から交渉をはじめ、〇〇ユーロときまったら、そこからあとは月々に落とし込んでいく形でした。

契約書には、月給が記載されているはずです。注意しなくてはいけないのは、この額面はbruttoつまり額面であり、nettoつまり手取りではありません。それゆえ(ドイツの場合、30歳独身者でここから40パーセントくらい税金で持っていかれる)ここから税金などを引いた額が、自身の手取りになります。

また、これに加えて残業時の加算であったりとか、休暇取得時のプラス分、ボーナスなどが加えられるため、一番手っ取り早いのは、全部合計して年収いくらくらいになるのか、を最初の段階で確認したほうが良いでしょう。

労働時間(Arbeitzeit)、休暇(Urlaub)

ここらでは、残業規定、フレクシブル規定などについて書かれているはずです。注意しておきたいのは、残業した際の時間はどこにいくのか、というところです。会社によっては、それを残業代としてもらえるところもありますし、それを有給に使えるところもあります。

また、ドイツの場合、大抵年間の有給は30日程度で、それに加えて国民の祝日などを享受できます。

ただ、忙しい会社などですと、年内に有休を全部使いきれるか微妙なところもあり、そういった場合、有休を翌年に持ち越せる、みたいな制度のところもあります。

また、病気やけがなどで会社を休む場合、最初の1日~2日は医師の証明が不要、3日目から必要、みたいなところが多いです。

個人情報

最後に、ドイツの企業で働く場合、負債の有無を確認されることがあります(例えば、以前会社を経営していて倒産、未だに借金がある、など)。これは、なぜ聞かれるのかというと、ドイツの法にのっとり、借金を取り立てる側は、その負債者の雇用者のところに押しかけてもよい、という仕組みがあるからです。

給料を超える分の返済は求められないので、例えば、現実的にいえば貸した側が会社のところにコンタクトをとってきて「毎月そいつの給料の3割を、こっちによこせ」みたいなことを言ってくるわけです。

そんなことをやられると、人事としてはひどい手間なので、できるだけそんな面倒を持ち込むようなやつは避けたい、という意図で、こういった個人情報の開示を求められることがあります。