卒業は簡単だが出るのは難しいと言われる欧米の大学院ですが、その真骨頂は「期末試験」で発揮されます。特に必修科目はパスしなくては卒業できないうえに、残機(つまり、受けられる回数)が一般的に3回と限られているので、卒業できずに詰む確率の高い科目です。
ドイツの一流大学院を卒業した僕の経験を元に、ドイツの経営学(BWL)学科の試験の仕組みと対策についてお伝えしましょう。
[word_balloon id=”unset” src=”https://uueuro.com/wp-content/uploads/2019/05/Picture3-252×300.png” size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]田辺です。地獄のBWL大学院をGPA3.0以上で乗り切った経験をもとに、試験の難しさを解説します。[/word_balloon]
科目の種類
日本の大学同様、ドイツの大学には科目の種類があります。つまり、卒業までに必ずパスしなくてはいけない「必修科目」、パスしなくてはいけないが選択肢が豊富な「準必修科目」、そしてフレキシブルに選べる「選択科目」です。以下、それぞれの科目群について解説していきましょう。
必修科目
文字通り、「卒業までに合格することが義務付けられている試験」のことです。ドイツには、一度ドロップアウトした学部は適正無しとして二度と就学できない、という決まりがありますが、このルールの恐ろしさはこの「必修科目」と併せて理解することができます。
- 試験は最大3回までしか受験できない(3回落ちたらその試験はもう受けられない)
- そのルールは必修科目でも同じ
- 必修科目を落とすと、大学が卒業できない「詰み」の状態になる
- 卒業できないと必然的にドロップアウトとなり、二度と同じ専攻の学位をとれない
選択科目であればいくら落としても問題ないのですが、必修科目は話が別で、3回試験に通らないと「詰み」ます。しかもこの必修科目、大抵は1科目ではなく4~5科目ほどあり、それぞれ3回までしか試験にトライできません。一つでも落第するとヤバいわけです(もっとも、実際には「5つある必修科目のうち、4つパスすればセーフ、といった措置をとっている大学が多いですが」)。
特に、2年間かけてその他の単位を全部取っていて、最後の最後でこの必修科目を落とし、卒業できなくなったら目も当てられません。今までの時間と努力が全て水の泡になってしまうわけです。というわけで、後からの精神的プレッシャーを軽くするため、大抵の学生は必修科目を1~2セメスターで終えてしまいます。
[word_balloon id=”unset” src=”https://uueuro.com/wp-content/uploads/2019/05/Picture3-252×300.png” size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]必修科目はマジで初見殺し。過去問がないと死にます。ちなみに、学生の中には試験開始直後1分で部屋を出ていく人も(あ、これアカンやつだ、と悟って、試験を受けずに追試にかける人たち)[/word_balloon]
準必修科目
必修科目はドロップアウトに直結する死の科目ですが、準必修科目は割と余裕があります。30~40ほどラインナップがあり、そのうちの5科目ほどパスすればOKと見なされます。一つでも落とすと後がなくなる必修科目と比べ、かなり気が楽でしょう。
もっとも、準必修科目にもいくつか条件があり、例えば私の大学院では以下のようなルールがありました。
- 4~5つある数学講座(例:利益最大化のための価格決定論、計量経済学のための数学、サプライチェーン効率化のための行列論、等)のうち、最低でも一つクリアする
- 4~5つある統計講座(例:ベイズ理論のマーケティングへの応用、推量統計学と市場調査、等)のうち、最低でも一つクリアする
- 4~5つあるセミナーのうち、最低2つクリアする
- 自身の専攻分野の公式科目を3つ選択する
繰り返しになりますが、選択肢がいくつもあるので上記の「必修科目」よりも気持ち的にはだいぶ楽になります。とはいえ、無限に選択肢があるわけでもないですし、経営学部の場合数学や統計系の難解な科目が多く、気を引き締めてかからないと試験で玉砕します。
[word_balloon id=”unset” src=”https://uueuro.com/wp-content/uploads/2019/05/Picture3-252×300.png” size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]大学次第では準必修科目は豊富で、後から他の科目で成績の上書きもできるので、必修に比べると気持ちははるかに楽です[/word_balloon]
選択科目(Wahlmodule)
あとは、同学部の中から適当に選んだり、他学部や留学先の単位を認定してもらうなど、フレキシビリティの高い「選択科目」というものが存在します。この「選択科目」は成績の底上げを図るうえでも単位を落とす恐怖におびえる心配もないという意味で、まさに神のような科目です。
一般的には、1~2セメスター目で「必修科目」と「準必修科目」をほぼ片付け、3セメスター目で「選択科目」を選んで楽をし、4セメスター目で「卒論」を完了させるのが経営学科の学生の定石となります。中には、途中でインターンや交換留学をはさむこともあります。
[word_balloon id=”unset” src=”https://uueuro.com/wp-content/uploads/2019/05/Picture3-252×300.png” size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]選択科目はイージー。語学の授業とかを換算できるところもあるので、成績でも最高得点を稼ぎやすいですね。[/word_balloon]
試験にはどれくらい準備が必要か
さて、ドイツの大学の期末試験が日本の大学生と一線を画すのには以下の2つの理由が挙げられます。
- 必修科目のように、落とすと「詰む」
- 就職時に成績が重視される
この2つの理由によって、ドイツの大学院生たちは馬車馬のように学生生活を勉強に捧げなくてはいけません。ちなみに、BWL学の学生のドロップアウト率は2~3割程度で、ドイツの学部の中でマシなほうです。中には物理学や数学の学部のようにドロップアウト率が50%近い学科も存在しています。ちなみに、留年し続けると「オーストリア大学院留学で落ちこぼれ・・ノイローゼで中退した29歳男性の悲劇」の記事で紹介したようにノイローゼになります。
さて、準備に関してですが、一般的なドイツの学生に推奨されている自習時間は1科目につき60時間です(私の大学院ではこうでした)。1科目につき大体3ヶ月の準備期間があるため、最低でも一日3時間程度は講義以外に自習しておく必要があるわけです。一日に講義が1~2科目分あることを想定すると、一日のうち6~7時間は勉強にとられます。
[word_balloon id=”unset” src=”https://uueuro.com/wp-content/uploads/2019/05/Picture3-252×300.png” size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]日本の大学生のようなキャンパスライフを謳歌したければ、欧米の大学や大学院には行くべきではないです笑[/word_balloon]
これはあくまで一般的なドイツの大学院生に推奨される勉強時間であり、ネイティブでない我々日本人が優秀な成績を残そうと思ったら、もう少しハードに勉強する必要があるかも知れません。もっとも、大学の成績がものをいうのはドイツで就職する場合なので、日本に戻って就職活動するなど考えていればそこまでガチで試験勉強する必要はないかも知れませんが。
試験の形式ですが、選択問題はあまり見かけません。記述問題と計算問題がほとんどですので、運だけでは乗り切れない形式が多いと言えるでしょう。記述が多いという事が、英語(ドイツ語)でのリーディング・ライティング能力が優れていないと乗り切れないことをも指し示しており、「海外の大学は入るより出るのがキツイ」という理由が分かるのではないでしょうか。。