短期の語学留学や、交換留学と異なり、異国の大学に入学する、という行為の難易度は、決して安易ではありません。ましてや、海と大陸を隔てた、世界のほぼ反対側にある国での留学となれば、なおさらです。
今回は、ドイツの大学院を卒業する際の難易度について、4つのポイントからまとめて行きたいと思います。
教育水準が高く、卒業の難しいドイツの大学院
教育水準が高い一方で、授業費がほぼ無料という条件を満たすのは、欧州広しと言えど、ドイツとほんの数か国のみです。アメリカやイギリスのようにびっくりするような学費が請求されるわけで無いにもかかわらず、東欧のようにクオリティの低い授業内容というわけでもありません。
それゆえ、日本のみならず、韓国、中国、アラブ、南米、ロシアなどから、毎年多くの大学生が大学・大学院で勉強するためにドイツにやってきます。
その中の多くは、ドイツに残り、現地の企業でマネージャーになったり、教授になったりと、成功の道を歩みます。
一方で、知られていない部分では、多くの学生たちが卒業に失敗、頓挫しています。私の学部では、同級生に4人の外国人がいましたが(他はみんなドイツ人)、卒業まで生き残ったのは私ともう一人のロシア人だけでした。
他のヨーロッパの大学同様、ドイツもまたしかり、「卒業が難しい」ことで有名です。我々のような外国人にとっては、勉強面だけでなく、性格面、金銭面の問題も、たびたび留学失敗のもととなってきます。
ドイツの大学院に留学した日本人はどのように”詰む”のか
ここでは、主に4つのポイントに絞って、留学生がドイツの大学院で「詰む」理由についてまとめていきたいと思います。
勉強面
上述の通り、ドイツの大学院の試験や卒論の難易度は、日本の文系大学の比ではありません。また、無限にテストを受けるチャンスがあるわけでもなく、例えば私の大学院では、同じ科目につき受験できる上限は3回まで、しかもそれらは必修科目なので、落第=退学、という構図でした。
試験は、当然日本語では行われず、英語、またはドイツ語で行われます。ドイツ人の中でも、「今回の試験、問題文全部読む時間なかったな」とつぶやく人がいますので、どれだけ語学力が求められるか、想像するだに難くないと思います。
語学だけでなく、基本的な試験に対する意気込みも異なります。多くの学生が、試験の数週間前から図書館に籠り、試験勉強のための準備を始めます。
いざ、試験を突破したとしても、今度は総合の成績が重要になってきます。多くのドイツ企業が、入社のための最低GPAを2.5や3.0に設定しており、それを下回る場合、応募すらさせてもらえないこともあります。
それゆえ、ただ試験をパスするだけでなく、ある程度見られるレベルの成績で、各試験を突破していかないといけません。
情報面
ドイツの大学をスキップして、大学院から入学すると、まず真っ先にぶち当たるのが「情報量」の壁、です。ドイツの大学を経験した学生にとって当たり前の情報、どこどこで過去問が手に入る、どこどこで試験を申し込める、といった情報は、日本で学部を卒業した私にとっては、全て耳慣れないものでした。
致命的なものになると、卒論の申し込みの期日、落としてはいけない必修科目のことなどに及び、ドラクエ7の石板のように、一回取り逃してしまったために、卒業できなくなる、といった所見殺しの事態が生じます。
金銭面
ドイツの大学院に通いながら、アルバイトを両立させるのは非常に難しいです。履修科目がタイトすぎて、とてもじゃないですけど、勉強以外のことに時間を費やす余裕が生まれないのです。
そして、現地で奨学金をとるのも至難です。年間120万円程度、語学学習費などを除き、卒業までに300~400万円程度をみておく必要がありますが、基本的にごくごく普通の学生が奨学金を申し込んでも、アクセプトされる確率は低いので、あまり期待しないほうが良いでしょう。
大学院自体は「4セメスター」、大学によっては「2セメスター」で卒業することが可能ですが、本当にこの「セメスター通り」に物事がうまく進むかは別問題です。仮に、4セメスターでストレートでの卒業となれば、2年間ですので240万円程度で事足りますが、途中でインターンなどを挟めば、卒業は1セメスター、2セメスター遅れます。
インターンを行えばお金を稼ぐことができますが、3ヵ月以下のインターンの場合、得られるのは最低賃金ですので、月の生活費くらいの足しにしかなりませんし、見つけるのも簡単ではありません。
親御さんなどの伝手を使ってお金が借りられるのであればまだしも、まったく自分でやりくりしなくてはいけない場合、しっかりと資金計画を立てておかないと途中で詰みます。
自分の性格的にドイツに住むことが可能か
理想を言えば、以前に3ヵ月以上海外に住んでみた経験があれば、それが「海外に適合できるか」の試金石になります。まず、ドイツ人は日本人ほどやさしくないので、大学で一人で座っていても別に誰かが声を助けてくれるわけではないです。
むしろ、アジア人には食傷気味なので、向こうから興味をもってくれることはあまりないと、覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
そんな状況下で、文化も言葉も違うドイツ人グループに自分から突っ込んでいって打ち解けられるか、もしくは打ち解けられないのであれば、一人きりでキャンパスライフを乗り切る覚悟があるか、考えてみましょう。
安全で、物事に秩序こそありますが、人種、言語、文化、気候、様々などあらゆる違いを鑑みるに、ドイツは日本人が住むにあたって、難易度がそこまで低い国だとは思いません。