がん保険、終身保険、死亡保険など、日本にはたくさんの種類の生命保険が揃っています。
そんな日本の生命保険に、海外在住者は加入することができるのでしょうか?
海外在住者は日本の生命保険に加入できるの?
ガンや重大な疾病の危険は、世界中どこに住んでいても公平にやってきます。
私もすでに30代中盤に差し掛かり、そろそろガン保険の一つでも入っておこうか、と思ったのですが、ドイツに住んで数年たった今でも、中々ドイツの保険制度を信用できずにいます。
そのため、以前日本に帰った時に、いくつかの生命保険会社を辺り、海外に居を構え、海外の企業で働いている私のような人間でも加入できるのか調べてみました。
【体験談】海外在住者の生命保険加入は難しい
基本的に、日本の保険システムは、代理店制度をとっており、個人が直接会社に申し込むのではなく、どこか代理店を介して申し込む仕組みになっています。
そのため、私も、先日日本に帰った時、某保険代理店大手に予約をし、カウンセリングをしてもらうことにしました。
カウンセリング当日、朗らかなお兄さんに席に通されます。
「いらっしゃいませ!おはようございます!〇〇と申します!」
私より数個年下のお兄さんに名刺をいただきました。日本のサービス精神は高く、ドイツの不愛想なサービスに慣れていると時々恋しくなります。
「まず、お客様の情報を知り、的確な保険プランを立てるため、下記フォームをお埋めください」
と、言う具合に、アンケート用紙のようなものを手渡されました。
まだこのお兄さんは、私が海外在住だということを知りません。
アンケート用紙を埋め、手渡し、お兄さんが確認していく段階になって、段々お兄さんの顔が険しくなっていくのがうかがえました。
「一時的ではなく、海外に長期滞在されているのでしょうか?」
「はい」
「この、〇〇、という会社は日本の会社で、駐在で行かれているのでしょうか?」
「いえ、現地の会社で、現地で働いています。こんな状況でも、生保入れますでしょうか?」
「う~ん・・・」
お兄さん、悩みこんでしまいました。
早速、いくつかの日本の大きな生保会社に電話して確認してくれます。
ところが、大手生保会社は全て、「すでに海外に住んでいる日本人」の生保の引き受けを断ってきたようでした。
ならば、とアフラックなどの「外資系生保」にも電話をかけてみます。
結果、引き受けてくれそうなのはゼロ件。渡航前で、住民票が日本に残っている状況ならともかく、一度住民票を抜いてしまい、明確な意思をもって海外に居ついてしまうと、そこから生命保険に加入するのは難しそうです。
結論
大手保険代理店の努力にもかかわらず、すでに海外に在住している者が日本の生保に加入する術は無さそうでした。
実際に、日本の生命保険大手、日本生命のHPを見てみると、海外からの引き受けに関しては、以下のような回答がなされています。
海外渡航中の保険加入は取扱いできません。
また、渡航前であっても、渡航先や渡航期間、渡航先での仕事内容等によっては取扱いできない場合や、引受けできない場合があります。
海外渡航中だから、日本に一時帰国しているときはOKなんじゃないか、と思われますが、「渡航前であっても、渡航先や渡航期間、渡航先での仕事内容等によっては取扱いできない場合や、引受けできない場合があります」と書かれているように、その後また数年海外に在住する予定がある場合、基本的に受け付けないはずです。
もし、ここで嘘をつくと、今度は虚偽申告となり、保険金が下りません。
つまり、争点となるのは「保険加入時の住民票の場所」及び「将来どこに居を構えるか」の2点です。
保険加入時の住民票の場所
保険加入時の住民票の場所というのは、海外移住者であれば基本的に一度、渡航時に市役所や区役所に行って住民票を抜いてしまい、健康保険などの支払い義務を免除されることになります。
逆にいえば、ずっと親元にいて、海外に行く際に(本当はダメなのですが)住民票を日本に残したまま、という人には、一見するとチャンスがあるように思えます。
ただ、保険会社は、「虚偽申告」に対して厳しい措置をとることで有名です。具体的には「住民票は日本に残し、ただし自身は海外に数年滞在していた、これは日本に居を置くとみなされるか否か」という問題です。
これは、非常にグレーゾーンなポイントで、保険会社の支払い部門如何でいくらでも解釈されてしまう問題です。特に、数日の入院レベルならともかく、がん保険、死亡保険など、100万円をこえるような保険金支払いの場合、必ず保険会社の厳しいチェックがはいりますので、その際に自身が事実上海外に住んでいた、ということが判明してしまうと、いくら住民票が日本にあっても厳しいと思います。
将来どこに居を構えるか
もう一つ、重用となるのが、海外渡航が一時的なものか、それとも明確な意思をもって海外に移住したのか、という点です。
後者の場合、日本の生命保険会社によって引き受けてもらうのは、非常に難しくなります。
ただし、例えば駐在員などで、キャリアの基盤はあくまで日本にあるものの、日本に戻ってくる予定がある場合、これはセーフのようです。
じゃあ、この判断を誰がするのかというと、同じく、保険金の支払い部門です。
同じく、上述の日本生命のHPから、「加入している保険は、海外渡航中でも保障されますか? 」という質問に対する回答を引っ張ってきましょう。
国内と同じように、ご契約の約款に基づいて保障します。
※ただし、入院・手術給付金等の場合は、入院先が『日本国内の病院または患者を入院させるための施設を有する診療所と同等の日本国外にある医療施設』に限ります。
ですので、保険会社の解釈としては、「保険加入の時点で、海外永住の意図が全くなかった」が、途中で人生のプランが変わり、海外に移住した、は会社によってはセーフだと思われます。
ですので、海外にすでに移ってしまった、あるいはすでに会社などを辞め、明確に海外移住の計画がある人は、生命保険への加入を日本で行うのは難しそうです。
逆にいえば、会社勤め中などに加入しておけば、一部の保険会社は海外渡航後も契約の続行を認めてくれるようです。