ドイツに長いこと住んでいると、選手としてサッカーをプレーするためにドイツに来た日本人とたくさん出会います。何事においても人を一括りに語ることはあまりよくないですが、サッカー留学に来る人は、あまり勉強をしてこなかったせいか、かなり危ない橋を渡っているように思えます。
一番記憶に残っている悪い例は、デュッセルドルフの街を偉そうに歩いている20前半の若いサッカー選手。その右手にはウォッカ、左手にはマリファナが握られていました。
中にはそのまま取り返しのつかない20代を過ごし、完全なる負け犬としておじさんになっていくことが容易に想像できる人も、残念ながらたくさんいるわけです。
そこで今回の記事では、短期的というよりは、長期的なサッカー留学、つまるところこちらでプロを目指すような日本人サッカー選手の特徴を解説するとともに、失敗例を紹介しながら、対策を立ててもらおうと思います。
ドイツに来る日本人サッカー選手の特徴
ここでのサッカー選手には、ブンデスリーガ1部や2部でプレーする選手は除きます。この記事に該当する人は、だいたい5部以下でプレーする方々です。
- 日本食屋でアルバイトして生計を立てている
- ドイツ語や英語が話せない
- 斡旋会社に高い料金を支払っている
上記はあくまで特徴で、それが悪いわけではありません。4部以下だと給料が出るクラブは稀ですし、出ても数十ユーロから数百ユーロで、生活するには少な過ぎます。さらに、スポーツに打ち込んできた方々ですから、英語やドイツ語が堪能な人は稀で、むしろ勉強嫌いである人が多いように見えます。
そうなると働く先は、特にスキルが身につくわけではない低賃金の日本食屋となるのです。さらに、ドイツという異国の地へ飛び立つわけですが、伝手もなくサッカーを始めることはできないので、膨大なお金を支払って斡旋会社に依頼をします。
失敗例① 何もないままオジサンになって帰国
こういった生活を続けるとどうなるのでしょうか?普通であれば会社に就職し、少なくともその業界の知識や会社員として働くための知識と経験を会得できます。ですが、日本食レストランで仕事を続けても特に何のスキルも身につかないので、夢をあきらめて日本へ帰国する際、貯金もろくになく、年だけ取ってフリーターとして過ごすことになるでしょう。
若い頃は、夢を追いかけて、女の尻を追いかけて、楽しい仲間とお酒が呑めればそれでいいと思ってしまいますが、20代にきちんとしたキャリアプランを立てておかないと、とんでもない人生がサッカー選手を待っていることでしょう。
ちなみに、日本食レストランでも料理や最低限の会話のスキルは見に着くのでは?という疑問が湧いた方もいるかもしれません。まず、ウェイターとして働いた場合、本当に最低限のドイツ語や英語はできるようになりますが、だからと言って例えば営業職に就けるわけでもなければ通訳に慣れるわけでもありません。むしろ、ウェイターとして勤めながらもまともな会話ができていない人がほとんどです。
キッチンで働くのはどうでしょうか?これもスキルは身に尽きません。なぜなら、そこまで料理を追求している日本食屋が少ないからです。もちろん米の炊き方、かつ丼やカレーの作り方は覚えられるかもしれませんが、それは誰でもできますよね?スキルなどとは言いません。人よりちょっと料理が上手いだけでは、スキルではないのです。
失敗例② ドイツで貧困層として生き続ける
30代が近づくと、徐々に自覚をし始めます。「日本に帰ってもできることがないかもしれない・・・」と。では、ドイツに残るか、という決断をする人も中にはいます。しかし、ドイツに残っても完全なる貧困層の一員です。
言葉がろくにできない、スキルもない、月給は手取りで2,000€を切る人がほとんどでしょう。これは円換算をすると結構もらっているように思えるかもしれませんが、物価が高いドイツでは、感覚的には20万円以下です。貯金もできず、旅行もできず、車を持つのも厳しいでしょう。
またレストランで働くと通常はチップをもらえますが、日本食レストランの場合、平気な顔でチップをスタッフに分け与えないところが結構あります。働く前に必ずチェックすることをオススメします。
勘違い① エージェントの相場
事実と自身の知識に乖離がある人が多いので、よくある勘違いもここで指摘したいと思います。下調べをあまりしてこないのか、そもそも留学斡旋の費用感も曖昧な人が多いです。一番高いサービスを提供してるところで、ビザやチーム斡旋もある中で100万円超え。
ちなみにこういったサービスを提供するところで本当にドイツの良いクラブチームと提携しているところは見たことがありません。
逆にビザサポートや現地でのサポートは最低限であるが故に、斡旋を10万円から20万円で行っているところもあります。これくらいの価格であれば非常に良心的です。
勘違い② 自分を過大評価
日本からドイツへ来る下部リーグのサッカー選手はよくこう口にします。「日本では評価されない」「日本の監督はサッカーを知らない」「だからドイツでなら成功するかもしれない」。まず何よりも、日本というサッカー後進国で評価されていない以上、ドイツで活躍するのはさらに困難だということを認識できいません。このような人はドイツに来ても鳴かず飛ばずの時期を過ごすことになるでしょう。
サッカー先進国へ挑戦しに行く、という覚悟を持つことが大事です。日本という環境のせいにしていることが、自分の小物さを象徴してしまっているので、心当たりがある人は今からでも遅くないので、修正しましょう。
勘違い③ ドイツを過小評価
足元の技術だけで見れば、日本人は世界に通用するものがあるかもしれません。それは、下部リーグに行けば行くほど顕著です。だから、ドイツの練習に参加しても、自分の方が上手いと感じる経験を持つサッカー選手は多いはずです。
ただし、ここで「足元の技術が高い=サッカーが上手い」と勘違いしてしまう人がいます。これは疑似相関関係であることを強く認識してください。サッカーが上手く試合に出れる人に、足元の技術が高い人は多いかもしれませんが、足元の技術が高い選手がみな試合に出ているわけではないですよね?
サッカーで上を目指す人なら分かるはずですが、ポジショニング、ボール奪取力、そもそもフィールドで戦える選手かどうか、など評価すべき項目は多岐に当たります。特にドイツは下に行けば行くほど、戦える選手というのが評価されます。そこでいくら美しいボールタッチを見せても、試合に出ることに直結はしません。
ドイツのクラブチームが何に美徳を置くのか、チームの監督が何に重きを置いているのか、そこを察知しない限り、「自分はなぜ試合に出れないのか?」という疑問を抱き続けることになるでしょう。
勘違い③ 外国語は必要ないと思っている
内田篤人選手、香川真司選手など、ドイツ語や英語が話せなくとも活躍してきた選手は数多くいます。しかし、それは彼らが圧倒的なパフォーマンスを発揮しているから。ドイツ語力を差し引いてもピッチに立たせる価値があると、監督が判断したからです。
しかし、5部や6部で擽っているような選手は、頭一つ抜けるような実力を持ち合わせていません。そりゃ、本来4部でやる力の選手が5部や6部にいれば、輝くことでしょう。ですが、もしその選手がドイツ語を話せたのであれば、4部でプレーし、3部を目指すこともできるかもしれません。そうなると人生は変わります。
ドイツ語を話せるというのは非常に大事なことなので、「誰かが話せなくてもやれているから大丈夫」と言い訳を探すのはやめて、今すぐ語学の勉強に着手しましょう。ダッシュ、トラップ、シュート、ドイツ語、です。同じくらい大切にしてください。
まとめ
かなり厳しめに書き始めましたが、素晴らしい人柄でひたむきに頑張っているサッカー選手がたくさんいることも知っています。これからドイツへサッカーをしに来たいという人は、この記事で紹介したような人たちを反面教師とし、正しい努力を重ねてください。
そうすれば、仮にサッカーで成功できなかったとしても、いち社会人としてまともな大人になれますし、サッカーから離れたときも、自信を持って「サッカーをやり切った!」と言えることが財産になります。