会社を退職すると、今まで会社から受けていた保護を失います。つまり、健康保険、年金、住民税など、給与天引きされていたものの負担が、全て個人の責任になって跳ね返ってくるわけです。
海外留学のために自己都合退職をすると、こうした事務手続きを一手に片づけていかなくてはいけません。
脱サラ海外留学者のための社会保障手続き講座
海外留学の形態は多数ありますが、この記事でターゲットにするのは、私のように日本の企業に数年勤め、自己都合で退職し、海外に留学するようなケースです。
その場合、以下の3つの手続きを自己責任で行っていく必要があります。
- 健康保険
- 住民税
- 年金
- 既存保険(生保、損保)の見直し
健康保険
会社組織に属している期間、労働者は基本的に会社の健康保険組合の一員として、社会保険を享受できます。つまり、医療機関などを利用した際に、自己負担額が3割負担となるあの制度です。
会社を退職すると、退職日の翌日付でこのメンバーから脱退することとなり、代わりに「国民健康保険」の保障を受ける形となります。
ただし、健康保険制度への加盟とその保険料の支払いの義務は、あくまで日本に居住する者に課されるのであって、海外移住者はその範囲ではありません(別に海外在住中に継続しても問題ありませんが)。
ですので、住民票を抜いた瞬間から、健康保険の支払いの義務は発生しなくなります。また健康保険に加盟したい場合、帰国時、住民票を戻したり、再び日本の企業に勤めれば復活します。
逆に、住民票を抜かず、健康保険を継続したままにしてしまうと、日本の医療機関を使用しない期間中も、ずっと健康保険料が発生し続けることになってしまいますので、注意しましょう。
住民税
会社勤めの場合、給与天引きとなるのが一般的なこの住民税ですが、会社を退職してしまうと、翌年の住民税の支払いは自分で手続きしなくてはいけません。
この住民税、「昨年の所得」によって課されますので、すでに会社を辞めて日本を離れ遠いヨーロッパの地で留学を開始していたとしても、容赦なく請求されます。
この住民税の不払いは、財産の差し押さえなど極端な措置につながるため、滞納せずに速やかに払う必要があります。すでに日本に銀行口座などがなく、支払いが難しい場合、親族など代理人を立て、代わりに支払ってもらう手続きも可能です。
年金
日本に居住する以上、年金の支払いも国民の義務として課せられます。ただし、海外に住居を移した場合、あるいは収入がストップした場合は、猶予期間を使用することで、支払いを免除されます。
注意しなくてはいけないのは、この支払免除はあくまで免除であって、この不払いの期間が長引けば長引くほど、将来の年金の支給額が少なくなってしまう、ということです。
ちなみに、海外にいる期間も、払うことは別に可能です。
既存保険(生保、損保)の見直し
最後に、もし生命保険や損害保険に加入している場合、海外渡航前に見直しが必要です。
例えば、一部の生命保険会社は、海外在住者に対して生命保険を支払わないような約款事項を設けている場合があります。
また、正確に住居の変更などを申告しなかった場合、万が一事故や病気になっても、生命保険会社や損害保険会社から保険金が支給されないこともあるため、渡航前に必ず懇意の代理店などと相談し、事務手続きを済ませておきましょう。