チェコでは2019年に外国人滞在のためのルールが変わったのをご存知でしょうか?
日本人はチェコでは外国人に当たるので、実はこれ大なり小なり私たちにも影響します。
今回は私たち日本人にどう影響するのかを解説していこうと思います。
ちなみに今回の改正点は多岐にわたり全部を解説するのは難しいので私たち日本人に影響する点を書いていきます。
この新しい外国人滞在法はチェコで就職を考えている人にとっては大切なポイントになりますので是非一読してください。
[word_balloon id=”6″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]2019年7月に外国人の滞在に関する法律が変わったのをご存知でしょうか?実は自分も最近知ったんですが、これ日本人にも影響するんです。チェコに留学、就職を考えている人は読む価値ありです![/word_balloon]
どう変わった?新しい外国人滞在法の改正点
外国人が滞在する法律が変わったって聞くと一瞬ドキッとしますよね。
実はヨーロッパではこういったことはちょこちょこあり、その度に外国人は振り回されたりします。
これは自分の意見ですが、こういった自国民に直接にはあまり影響しない法律ってのは変わりやすいんじゃないかなーって思ってます。
さて今回の変更は2019年の7月31日より施行されました。
さて、この法律は英語だとAct No. 176/2019 Coll., which amends Act No. 326/1999 Coll., on the Residence of Foreigners in the Czech RepublicとかThe Act on Residence of Foreign Nationals in the Czech Republicなどと呼ばれています。
The Residence of ForeignersやThe Act on Residence of Foreign Nationalなので、日本語で言えば「外国人滞在法」になると思います。
これは他のEU加盟国民も多少影響を受けますが、どちらかというとEU加盟国でない日本も含めた第三国を対象にしています。
高校生
今まで認められていたプログラムの一部は学生としてのビザが認められず、「その他」の項目でのビザになります。
とは言え、基本的に公立の高校に交換留学などで勉強する場合は今まで通り学生ビザになるはずで、これは公教育の枠外に当たる様な別のコースなどが「その他」のビザにカテゴライズされる様です。
これは恐らく学割などの恩恵が受けられなくてなる可能性がありますが、それでもチェコに滞在して学ぶことができるのでそこまで大きな変化ではないでしょう。
もう少し言えば、正直チェコの高校に留学する高校生と言うのはほとんど聞かないので、この辺は影響を受ける人はかなり低いと思います。
大学生
大学生は影響をある程度受けます。
ただ変更にはポジティブな面もあるので一概に悪いわけではありません。
2.1 残高証明だけでなく、定期的な収入も加味される
今まで学生はビザの取得のために銀行の残高証明を求められていました。
今回の変更により、残高証明のみならず定期的な収入があればそれも加味される様になりました。
チェコ政府のHPではないですが、ECOVIS(英語)の説明によると1ヶ月生活費として3,410コルナ、そして家賃に8,233コルナの合わせて11,643コルナ(1コルナ5円と計算すると約58,000円)が目安になるそうです。
ただアルバイトの様な不安定な収入の場合はどの様に評価されるか書かれておらず、また給料の支払いがチェコの口座でなく日本の口座になる場合は書類をチェコ語に翻訳しなければならず、収入の証明もややこしくなる可能性があるので注意が必要です。
大学卒業後9ヶ月間の仕事を探す、または起業する時間が与えられる
これは大学を卒業後、チェコで就職を目指す人にとっては朗報です。
今まではこの様なビザは無く、大学を卒業後すぐに仕事を見つけられていないとビザの問題がありましたが、これにより大学を卒業後でも慌てることなくじっくりと仕事を見つけられることができます。
2019年9月現在の失業率も2.1%と非常に低く、これで9ヶ月間の猶予があれば仕事を見つけられる可能性は十分あると感じます。
ちなみにこちらもチェコ国内から直接手続きをすることができるので手続きもあまりややこしくありません。
そして大学卒業後、起業する上でも基本的に条件は一緒です。
研究者
今回の変更では学生のみならず、研究者にも影響を与えています。
とは言え今までプラハに住んでいて研究者としてリサーチ目的でチェコに来た人ってのはあまり聞きません。
私の肌感覚では日本人では割合かなり低い様な気もしますが、折角なので合わせて説明したいと思います。
例えば今まではチェコで仕事を見つけて来た場合、その後チェコで研究をしたいと思ってもチェコ内で手続きをすることはできませんでした。
しかし今回の変更によりいつでもチェコ国内で直接ビザ変更の手続きすることが可能になったので手続きの負担が楽になりました。
逆に研究ビザでチェコに来た人もその後チェコで仕事を得た場合、チェコ国内でビザ変更の手続きができる様になったので、研究者が後々に職を変えて働きやすくなりました。
外国人労働者(Employee Card)
今回の変更点で1番のポイントはここだと思います。
残念ながらこの部分の変更はマイナスな点がありますので注意してください。
就職して最初の6ヶ月は転職ができない(例外有り)
上でも書いた通り、ここ数年チェコでは非常に低い失業率のおかげでビザを持たない外国人にも比較的仕事が見つけやすくなっています。
チェコで働く上で日本人を含む外国人はEmployee cardというプラスチックのカードを外国人警察から発行してもらいます。
しかし企業がお金と手間をかけて外国人を雇っても、外国人はemployee cardを手に入れたらすぐに仕事を辞めて他の仕事に転職してしまうという問題がありました。
ちなみに日本機械輸出組合(JMC:Japan Machinery Center for Trade and Investment)という非営利団体がありますが、ここが出している「2019年速報版チェコにおける問題点と要望」レポートがあります。
このレポートでチェコでの労働人材不足を
低い失業率に起因する労働力確保の難しさ。売り手市場ということもあり、採用後、他社に良い条件の求人がある場合、離職してしまうケースが多い。従業員確保のための賃金上昇が近隣の企業同士で行われ、人件費負担が上昇している。
と日系企業もこの問題を指摘していました。
こう言った問題に対処するため、外国人は仕事を手に入れても最初の6ヶ月は転職ができないというルールができました。
ちなみに雇用後90日間の試用期間での会社からの解雇や、健康上の理由、給料が支払われないなどの場合は例外になります。
転職する場合は最低でも30日前に外国人警察に届出が必要
これは手続きが増えて面倒です。
雇用主を変える場合、外国人警察への届出が必要になりました。
外国人の管理を管轄するチェコの内務省(The Ministry of the Interior)のウェブサイト(英語)には下記の説明があります。
Change must be notified at the latest 30 days before it happens. The most important is the day which is filled in the official form.
この部分を日本語に訳すと「変更には、発生する少なくとも30日前に通知する必要があり、最も重要なのは正式な書類に記載された日です。」です。
これも上記の理由で簡単に転職をさせないためだと思いますが、30日前というのは少し面倒です。
チェコでは試用期間を終えたあとに仕事を辞める場合、最低でも30日前に雇用主にそれを伝えなければなりません。
例外としてチェコの大学(院)を卒業した人は転職後3日以内に外国人警察に届出を出せる。
ありがたいことにチェコの大学を卒業した日本人はこの転職の際の事前の届出のルールが緩和されています。
少し長いですが、チェコ内務省のウェブサイトから引用します。
Foreign nationals with free access to the labor market
Information mentioned above does not apply for holders of employee cards who has free access to the labor market in the Czech Republic (according to § 98 law 435/2004) or who has work permit and he/she wants to change employer, job position or taking up employment in an additional job at he same employer or another employer.
These foreign nationals are obliged to notify change up to 3 working days from the day of change.
これは端的に言うと、チェコの大学(院)を卒業した人はチェコの労働許可を与えられ、この転職の際の最低30日前の事前届出をしなくて良いということです。
転職後3営業日以内に外国人警察に届出は義務付けられていますが、他の外国人労働者よりもかなり優遇されています。
人材派遣業への転職ができなくなった
上記のチェコ内務省のウェブサイトに下記の内容が出てきました。
It is not possible to notify change of employer or change of employment in an additional job at the another employer, if new employer is job agency.
これは簡単に言ってしまうと、外国人は人材派遣の会社に転職はできないということです。
もちろんこれはマイナスですが、ただ多くの外資系企業や日系企業は直接雇用をしてくれるので極端に制限されることはないかなと思います。
恐らく人材派遣業で多いのは単純労働や肉体労働系になります。
Employee Card申請又は更新時の支払いが事前になった
地味な変更点ですが注意が必要です。
今までは先ず最初にEmployee Cardの申請手続きをして、Employee Cardを貰うときに料金の1,000コルナをスタンプ(切手の様なもの)で支払っていました。
しかし今回の変更で、Employee Cardの申請、更新時に前払いで支払いが必要になりました。
支払いを忘れたせいで申請ができないとか悲しすぎるので気をつけましょう。
住所変更しても新しいEmployee Cardの発行は不要になった(手続きは必要)
これは逆に嬉しいポイントです。
従来はEmployee Cardの裏に自分の住所が記載され、家を引っ越した場合はその都度外国人警察に行って、1,000コルナ支払って新しいカードを作らなければいけませんでした。
今回の変更により、Employee Cardには自分の住所の記載がなくなりました。
今まで通り外国人警察には新しい住所を登録しなければいけませんが、新しいカードを作る必要がないので1,000コルナかかりません。
2021年よりIntegration courseへの参加義務付け
これはすぐではありませんが、2021年より導入されるとアナウンスされています。
既に長期ビザ保持者を対象にしたチェコ語のコースだったりIntegration courseは存在していましたが、2021年からは長期滞在許可を持つ全員が対象で、参加費用の支払いも義務付けされています。
ただこちらはまだ具体的なことはあまり決まってはいないようで、恐らくはチェコに住む上での法律やルールを学ぶのではないかなと思います。
まとめ
今回の外国人滞在法の改正は変わった部分が多く、日本人にも影響を与えている点が多いです。
すべてを細かく説明するのは残念ながら難しいので、日本人に影響が及びそうな大きい点について解説しました。
日本人にとって良い変更点もありますが、全体を見ると外国人移民を制限、管理強化する目的があり、デメリットの方が大きい印象です。
日本人は他の国の人より同一雇用主で長期的に働く傾向があるので、雇用後6ヶ月間の転職制限はあまり問題にならないかもしれませんが、転職のための余計な手続きと制限はやはりマイナスになるでしょう。
新しい外国人滞在法は知っておいた方が良いので、チェコで就職を考えてる方は気をつけてください。
ビザやEmployee Cardについての情報はチェコ内務省のウェブサイト(英語)から最新の情報が確認できます。
[word_balloon id=”6″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]現在チェコは非常に低い失業率のおかげで企業は外国人も積極的に採用しています。その分外国人はEmployee Cardを手に入れたらすぐに転職してしまう問題がありました。
現在の労働市場を反映した改正と言えます。[/word_balloon]