日本に私立大学と国立大学があるように、チェコにも私立大学と国立大学の両方があります。
今回はチェコの大学を卒業した日本人の視点からチェコの私立と国立の違いを少しお話ししたいと思います。
私立大学、国立大学双方にメリットとデメリットがあり、どちらの方が絶対にいいと言い切れるわけではありません。
ちなみに私はチェコの私立大学を卒業しているので特に文系私立大学の視点からお伝えします。
もしヨーロッパやチェコで大学の進学を検討される際は今回の記事を参考にして見てください。
私立大学と国立大学の差異
結論を先に言いますと、違いはあるがどちらも大学生、大学卒業生として見られるので卒業して就職しますと差はあまりでません。
なので学位取得を中心に考えるならばどちらも選択肢としてはありでしょう。
しかし大学生活や最低3年間に掛かる費用、そして卒業後の進路にも多少影響はでてきます。
共通点
先ず両者に共通する点ですが、上に挙げたようにどちらも正規の大学生として認められ、卒業しますと大卒の資格が与えられます。
もちろん大学側が学生ビザのための必要な書類を用意してくれますのでチェコに学生として滞在が認められます。
チェコではチェコの学生証があれば26歳まで学割の恩恵を受けることができ、定期券を買うときに大幅な割引を受けられます。
そして国立、私立共にチェコでは入学試験と卒業試験が課せられます。
入学試験の科目はどの学部学科を受けるかで変わってきますので一概には言えませんが、チェコ語で勉強するならチェコ語の試験、英語で勉強するなら英語の試験は入ってきます。
卒業試験はState Examと呼ばれ自分が勉強した科目のテストと、卒論の口頭諮問の2部構成になっています。
テストは事前にオープンクエスチョンの問題が配られ口頭で答えることになります。
そして卒論の口頭試問があり、二つ合わせて30分〜1時間ぐらいです。
国立大学
国立大学のポイントをまとめるとこんな感じになります。
- チェコ語で勉強すれば学費は無料(外国人含む)。
- 基本国立大学の方が入学が難しい。
- 大学ランキングも大学の知名度も国立が上。
- 入学の申し込み期限が早い。
- チェコ内の就職は国立は強い。
- 学生が多いため交換留学に行くのが難しい。
- 入学前にNostrification(高校の卒業認定)を終わらせなければならない。
実は私立大学にチェコ人はそんなに多くいません。
基本的にチェコ人は国立大学の方が私立大学よりレベルが上だと見ているのと、なによりもう一つの理由として、国立は無料だけど、私立だと学費が発生してしまうからです。
プラハ外に住んでいるチェコ人に私が行っていた私立大学の名前を伝えても知らないと言われたことも何回かあります。
申し込み期限はチェコで一番有名なカレル大学(日本でいう東大に相当)を例にとりますと、2月から4月までになっています。
そして入試ですが、これは日本人も受ける必要があり結構厄介です。
チェコ語の試験も受ける必要がありヨーロッパの基準で最低B2を求められます。
B2というのはレベルを6段階で分けた内の上から3番目になり、外国人が日本語能力試験を受けるのに比べますとN2(上から2番目)に相当します。
交換留学に関してですが、国立大学は規模が大きく、学生数も多いため交換留学に行くための枠は競争が激しくなります。
大学によりますが、一つの大学につきだいたい1〜2名しか交換留学に行けないので希望の大学に入るのは難しいでしょう。
言語の理由もあり、自然と国立大学はチェコ人の割合が大きくなり、外国人はスロバキア人、ウクライナ人、ベラルーシ人、ロシア人など、旧ソ連圏の人が多くなります。
スロバキア人はチェコ語を理解できるので特別勉強をする必要がなく、他のスラブ系も言語のグループが近いためチェコ語を学ぶのが難しくありません。
クラスごとの授業も学生が多いためプレゼンテーションなどはあまり行われず、試験一発勝負になることもあります。
先生も生徒の名前を覚えないで終わることもあり、学生と教授の距離ができがちです。
そして一点注意しなければならないのが、大学が始まるまでにNostrificationという高校の卒業認定を終わらせないといけないことです。
この手続きは複雑で時間がかかる可能性がありますので、国立大学に行くことを検討している方は事前の準備が必要になります。
Nostrificationに関してはまた別で説明していきます。
私立大学
私立大学は国立大学に比べると大学ごとの違いが大きいので一概には言えませんがまとめるとこのようになります。
- 入学は比較的簡単。
- 授業料が掛かる。
- 英語のプログラムが多い。
- 外国人の割合が高く、英語が共通語になりやすい。
- 私立大学は融通が利きやすい。
- 基本クラスの人数は国立より少ない。
- 私立は学校によって違いが激しく、国立大学より変わってくる。
- 交換留学に行きやすい。
- 先生との距離が近い。
- プレゼン、グループワークが多い。
- 良い評価を取りやすい。(良い大学院に行きやすくなる)
私立大学も国立と同じように入試がありますが、正直入学はあまり難しくないでしょう。
例えばAnglo American Universityでは高校の成績とTOEFLやIELTSなどの英語の成績、志望動機の書類を提出すればいいので、申し込みのためにチェコに来る必要はありません。
学費ですが、これは大学によって大きく変わっていきます。
一例を見ると、Metropolitan University Pragueは1年間の授業料は2,262ユーロ、3年間で6,786ユーロとなっていますが、New York University in Pragueでは卒業までに25928ドル、これを一年ごとに見ますと8,642ドルとなります。
私立大学は基本的にお金が欲しいので学生を呼ぶのに積極的で、国立大学より色んな面で融通はききやすいです。
例えば高校の成績証明書など英語で提出でき、言語の求められるレベルも低かったり交渉の余地があったりします。
私立大学でもNostrificationの手続きをしなければなりませんが、大学に入ってから一年以内に終わらせれば良いというところもあります。
入学の申し込み期限も国立大学より遅く、手続きに時間の余裕があります。
例えばこちらプラハにあるUniversity of Finance and Administrationでは手続きは8月31日までとなっており、Angro American Universityも申し込み期限は8〜9月までとなっています。
基本的にチェコ人はまず国立大学を申し込み、落ちた時に私立大学を申し込むパターンが多いです。
日本でいう滑り止めのような感じをイメージをしてもらえばわかりやすいです。。
私が大学に入学した時は一つの学部に80名の生徒がおり、うちチェコ人の割合は全体の10%ぐらいでした。
外国人の国籍はウクライナ、スロバキア、ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、トルコ、ドイツ、デンマーク、アメリカなど国立大学より多様性があると思います。
授業も1学期に1〜4回ほどグループプレゼンテーションやグループエッセイがあり、個人の課題よりグループで出される課題の方が多かったです。
ただ課題などは大学や勉強するコースでも多く変わってきます。
クラスも国立大学より少人数になるケースが多く教授との距離が近くなります。
そして私が私立において良い点だと思うのは、学生の人数が少ない分交換留学にいきやすく、良い成績も取りやすい可能性があることです。
大学院への進学を考えている場合、大学での成績は大切になります。
例えばこちらの記事にあるように、ドイツでは成績によってどこの大学院に行けるか変わってきます。
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チェコはドイツほど学歴社会ではなく、私は面接を受けた時に一度も大学での成績に関することを聞かれたことがありません。
しかし少しでも大学院の可能性を考えているならこの点は後々重要になります。
まとめ
どちらにも一長一短あり、必ずしも国立が良いというわけではありません。
大学の期間のみを計算した場合、国立大学に行く方が安上がりになり、既にチェコ語を話せるのであれば国立大学を受ける価値はあります。
しかし一からチェコ語を勉強しなければならない場合、大学に入るまでに更にお金と時間が必要になってきます。
英語で勉強する場合は国立大学で勉強しようと学費がかかるので注意が必要です。
あなたが英語で勉強するのであれば私立大学でも十分良い選択になります。
仮に大学卒業後日本で就活をするのであれば、99%の人はチェコやヨーロッパの大学について知らないのであなたがどこの大学に行ったというのはマイナス評価になることはありません。
チェコ以外のヨーロッパで大学院や就活をする上でも、国立大学を低い成績で卒業するよりは私立大学で良い成績を納めた方が印象が良くなります。
大学を検討する際は目的を考え、双方のメリットとデメリット、違いがあるので気をつけて、
その上で自分のゴールに合わせて大学選びをしてください。
今回の記事が参考になれば幸いです。
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