私が日本で大学生の時、日本の書店に行くと、ずらりと端から端まで、就活関連の本が並んでいて、どれを買っていいのか途方に暮れた覚えがあります。
インターネット、先輩のアドバイス、本や雑誌と、様々な媒介を通じて日本の就活の知識とは身に着けることが可能です。
ところが、遠く離れたここドイツの地では、日本人によるドイツ企業への面接、その合格のプロセスなどは、ほとんど出回っておらず、自分の努力で情報収集を進めるしかありません。
この記事では、日本人がドイツの会社に合格するためにしておきたい3つの努力についてまとめていきます。
3つの努力
私が日本で大学を出て、新卒で就職活動をしたときは、OB訪問や企業説明会、リクルーターとの面談など、色々な情報収集に時間を費やしたことを覚えています。
もちろん、企業や業界をしる、という作業は、ドイツでも重要なのですが、それと並行し、自分の面接での見せ方を磨くための自助努力が必要となってきます。
以下、ドイツの面接をパスしたいときに時間を費やしておきたい、3つのポイントです。
自己分析:会社との相性
日本の就職活動で、自己分析が必要なように、ドイツにおける就活でも、まずは自分の強みを知り、自分に適した業界、ポジションを知ることが重要です。
大学・大学院の専攻
ドイツでは、日本以上に、大学・大学院での専攻がものを言います。過去に職歴がない場合は猶更で、どれだけの成績を大学で残したか、どれだけその分野に知見があるか、が就職活動時に一つの指標となってきます。
例えば、私はドイツの大学院でBWLという、日本でいう商学部のような学科で修士を勉強しました。この学科は、コンサル、銀行、メーカーのマーケティング部門など、いわゆるビジネス一般で割と応用が利く学科になってきています。
その学科の中で、特に私は「マーケティング」に重点を置いたため、就活時には、私は自分の専攻である「マーケティング」を活かせるようなポジションを集中的に探しました。
ドイツの場合、日本でいう「総合職」という概念はなく、「マーケティング」「人事部」「営業部」と、部門ごとに求められる知識が異なるため、この、専攻=応募したポジションか、というのは、自分のキャリア形成の上でも、かなり重要な部分になってきます。
最終的に私が行きつき、現在働いているポジションも、ドイツ国外におけるマーケティングということで、その専攻をいかしたものになっています。
自分の職歴
日本や他国で就業経験がある場合、上述の専攻と同じか、あるいはそれ以上のウエイトで重きを置かれるポイントが、その職歴と、過去のパフォーマンスです。
私の場合、例えば日本のメーカーで、営業職を経験していました。それゆえ、日本ビジネス文化における知見が評価され、現在の会社では、日本の市場案件や、日本の企業と商品開発の案件で折衝を行うときには、駆り出されます。
もちろん、過去の仕事場で優秀なパフォーマンスを修めた場合、就活時に高く評価されます。これらは、履歴書に自分の強みを書くうえでも根拠となりますし、自分の職歴、その際に身に着けたスキル、自分の性格などを吟味することは、ドイツにおける就職でも欠かせない作業です。
将来のビジョン
自分が将来どのようなキャリアを描くのか、というのも、就活前に考えておかなくてはいけないポイントです。
「ドイツに一生残るのか」「日本に帰るのか」といった、キャリアのみならず、自分の人生設計にかかわってくるような問題も、ここでは含まれてきます。
例えば、ドイツでの生涯キャリアを思い描く場合、ジョブホッピング(転職)がしばしば行われることを念頭に置かなくてはいけません。こちらにも仕事を変えるチャンスがあり、逆にいえば、パフォーマンスが悪いと、向こうから首を切られる可能性がある、ということです。
したがって、就活の際には、すでに「今から3年後、5年後」に、この会社でどのような仕事経験や実績が残せるのか、それを転職市場で活かせるのか、ということを、考えておかなくてはいけません。
逆に、将来日本に帰ることを想定している場合、将来ドイツではなく、日本でこの仕事実績がどのように生かせるか、という部分を想定しなくてはいけないので、ドイツ(総務系等)に特化した知識を見につけるのは、無駄とまではいきませんが、役立てづらいかと思います。
語学力を鍛える
上述の自己分析は、ある意味短期的に行えるものですが、この章で紹介する「語学力を鍛える」という部分は、一朝一夕に行えないため、1年、2年のスパンを見込む必要があります。
英語
もちろん、どういった業界、ポジションに応募するかによりますが、一般的にドイツでキャリアアップを目指す場合、英語力は優先順位が高い項目の一つです。
日常会話レベルが必要とされるのはもちろん、実際には、社外との折衝(EU圏内のため、他国との英語による折衝のチャンスが非常に多い)、文書の閲覧などで、高度なビジネス英語力が問われることとなります。
推奨される英語力は、最低でもB2レベル(TOEFL85~95点程度)、英語でアドバンテージを出したいのであればC1レベル(TOEFL100点以上)が要されます。
私の仕事は、EU外、南アメリカや中国との折衝が多いため、日常的に使用する言語のうち半分は英語が占めています。
ドイツ語
これも業界やポジションによりますが、基本的にドイツの会社であれば、社内のコミュニケーションのため、ドイツ語が必要とされる会社が非常に多いです。ただし、研究畑、芸術分野などでは、ドイツ語は必要なく、英語のみで業務が行われるところもありますので、こちらも、上述した自分の専攻と照らし合わせる必要があります。
仮に、仕事でドイツ語を必要とされるのであれば、やはり一般的に「ビジネスレベル」に達しておく必要があります。
具体的には、ドイツ語で社内外と電話し、ドイツ人だけのミーティングに参加し、資料やマーケットについてドイツ語でプレゼンする、などです。
ビジネスドイツ語は、一方で、就業経験を通じて磨かれるケースが多いです。実際に、日本人でもビジネス日本語がおぼつかない人がいるように、全てのドイツ人がビジネスに用いるドイツ語を流ちょうに駆使できるわけではありません。
それゆえ、ドイツで就業する際は、過去にドイツの会社などでインターンなどを通じ、ドイツ語を使用した経験があると、大きく評価されます。
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面接の予行演習をする
最後に、かなり実践的な部分になってきますが、友人などと一緒に、ドイツ語(あるいは英語)での面接の予行演習をしておくことが肝要です。すでにドイツの企業で働いている友人などがいれば、ある程度面接当日の流れ、何が聞かれるかなどの情報は入ってくると思います。
以下、私が今までの面接で聞かれた項目ですので、これを参考に応答内容を考えておくと良いかもしれません。
背景、バックグラウンド
CVのレビューとして、自分のバックグラウンドについて1~2分くらいで自己紹介してくれ、とよく問われます。
もちろん、バックグラウンドと言っても、家族背景からコンビニのバイト経験まで教えろ、というのではなく、あくまで、業務に直結しそうな内容、具体的には、学歴、職歴、あとはドイツに来た背景、等です。
この設問に関しては、ひたすら練習し、暗唱できるくらいにしておいたほうがいいかもしれません。もちろん、棒読みになってはまずいですが、どこの面接でも、大体この質問がされるので、最初にスムーズに答えてリラックスするためにも、よどみなくドイツ語で回答できるようにしておきましょう。
仕事で何をしてきたか
ドイツの面接では、実践的な部分に突っ込まれます。職歴がある場合、そこでの経験が重要なポイントになってくることを理解しておきましょう。
具体的には、過去の仕事場でのパフォーマンスです。営業なら、営業成果、マネジメントならチームの成績、海外支店の立ち上げ、など、人によってアピールできるポイントは多種多様だと思います。
また、こうした成果を、どのようなプロセスを経て実現させたか、などの部分も強く評価されます。逆にいえば、いい成績を出しました、理由は分かりません、だと、当然評価されません。
仕事で何ができるか
私が今まで面接した中では、多くの場合で「この応募しているポジションで何ができるか」と聞かれます。具体的に、マーケティングなら、この市場にアプローチするのに、どのような手段をとるか、その根拠(ドイツ人は根拠大好き)は、と鋭く突っ込まれます。
自分が応募する会社の業績、ポジションのニーズなどを把握し、具体的に自分が職に就いたとき、どのようなアクションが起こせるのか、先立って考えておくと良いでしょう。
どういうキャリアを描くのか
冒頭でも述べましたが、就活とは一種のマッチングのようなものですので、こちらの将来のプランと、相手側のニーズがマッチしている必要があります。
ですので、こちらから何が提供できるかはもちろん、自分の側として、何を会社側に求めるのか、どういったスキルを身に着けたいのか、はっきりと主張できるようにしておく必要があります。