海外就職を志す人にとって現地の大学・大学院を卒業しておくというのは手堅い手段のように思えますが、不思議なことにドイツの大学・大学院を卒業してもあまり良い企業に内定できなかったり、そもそも就職すらできずに日本に帰国してしまうパターンが多くみられます。折角努力して辛い大学生活を乗り切っても就活に失敗する日本人の特徴とはなんなのでしょうか?
そもそも大学院って卒業できる?
ドイツの大学院に入学した外国人の進路について、特に統計データがあるわけではないので、僕の主観になりますが。僕の大学院の学部には40人弱の入学生がいて、うち3人は外国人、一人は僕、一人は大学院からドイツに来たブラジル人、一人はドイツに10年以上住んでいるジョージア人でした。うち、ブラジル人は途中でドロップアウトしたので、大学院からドイツに来て、卒業できたのは結局僕だけでした。
他の学部も、外国人の数自体は多いのですが、よくよく内訳をみると「ドイツに10年以上住んでる」「片親がドイツ人」「学部時代からドイツ」というドイツ歴の長い、もしくは生まれつきアドバンテージをもった人が多く、個人的に僕のような純粋な外国人の中で、ドイツの大学院からドイツ入りした人が卒業まで生き残る確率は6割前後くらいだと踏んでいます(ドイツの大学の中退率が3割前後なので、外国人は4割くらいになるのではないかと)。
- ドイツ全体の中退率は2~3割(学部による)
- うち、外国人は+10%くらいと予想
- そのため、日本人が大学院を卒業できる確率は6~7割かと
さらに、この卒業した中で無事就職できた割合は何パーセントくらいなのでしょうか。これも、外国人に絞ったデータがないのでなんとも言えませんが、個人的な感覚ではドイツ企業に就職するのはうち3割くらい、博士課程に進んだり教職についたりするのが2割くらい、母国に関係する会社に入るのが3割くらい、といった感じです。特に、日本人と韓国人は、ドイツに進出している母国の会社(サムソンやらLGやら)が多いので、そういった会社で働くことが多い傾向にあるように思えます。(※出典無し、完全に個人的な感想)
というわけで、入学時の7割が卒業できると仮定し、そのうち6割くらいがドイツで就職すると考えると、大学院に入学できても、卒業後まで生き残り無事就労ビザを得られる企業に入れる確率はこの時点で4割近くという計算になります。
参考記事:修了できない人が3割!?ドイツ大学院の難易度と卒業までのプロセスを解説します
[word_balloon id=”5″ size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]ドイツの大学院に数少ない外国人枠で入学しましたが、周りの学部を見渡しても、セメスターが進むにつれて中退していく外国人の数が目立ちます。。[/word_balloon]
日本人のドイツ大学院を卒業後の進路と就職ランク
周りを見ていると、やはり大手企業や優良企業に入社した外国人(特に韓国人や中国人が多い)たちの成績は非常に優秀だったように見えます。GPA換算で3.5以上、入学後も語学の研鑽を忘れず、ドイツ語、英語ともにC1以上、加えて母国語も話せる、といった高スペック人材がドイツ人のうらやむような難関企業に入社している印象ですね。
成績はGPA3.0前後、ドイツ語英語はビジネスで通用するレベルだがネイティブには程遠い、と、大学院生活をギリギリ乗り切った僕のような人材は「ごく普通」か「ちょっと優良」くらいのドイツ企業か現地に展開している母国の大企業に内定しているケースが多いように見えます。
成績がGPA3.0未満、英語のみで大学生活を乗り切った、という感じですと、こじんまりとしたニッチな中小企業、ピンポイントで人材が必要な母国企業への就職、といったところでしょうか。母国企業の多い日本人や韓国人はその点有利で、ベトナム人や南米人などは受け皿がなく、大学院を出ても飲食店や接客業に就職したり、帰国して就職する、というケースをよく見ます。
さて、この偏見を元にドイツの就職ランキングを作ってみましょう。
Aランク(上位10%くらい)
GPA3.5以上、ドイツ語英語ネイティブ並み、+母国語、豊富なインターン歴
- ドイツの超大手企業(Lufthansa、Deutsche Bank等)
- アメリカやイギリス系外資企業大手(金融、大手コンサル、グーグル、等)
Bランク(上位35%くらい)
GPA3.0前後、ドイツ語英語ビジネスレベル、+母国語、最低でも1社のインターン歴もしくは職歴あり
- ドイツ大手企業
- 現地に進出する母国企業の優良企業
Cランク(上位65%くらい)
GPA3未満、ドイツ語か英語どっちかビジネスレベル、+母国語、職歴あり、インターンは無し、就活ちょっと頑張った
- ドイツ中小企業
- 現地に進出する母国企業の中堅どころ
Dランク
かろうじて卒業レベル、英語かドイツ語どっちか通じるレベル、+母国語、職歴無し、就活頑張らず
- ブラック系企業(延々とコールドコール等)
- 仕事が見つからず帰国
[word_balloon id=”5″ size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”true” name=”田辺(ドイツ)” balloon=”talk” balloon_shadow=”true”]就職ガチ勢、特に語学も研鑽を続け成績もトップクラスのような日本人は良いところに就職していますね。大学を卒業することに必死になり、成績が追い付いていない学生は就活に失敗しやすいです。[/word_balloon]
中途半端な学生が陥りやすい無い内定とインターン地獄
ドイツでは、インターン期間を脱し、正規雇用されるまでにまた一苦労します。例えば僕の友達のタイ人は、僕と同じように大学院を卒業(GPAは2.5前後)、その後ドイツの会社で半年インターンするも、インターン後に正社員に誘われず、また別の会社に応募して半年のインターンを経験、そこでも正社員に誘われず、安価な労働力という形で就職市場を放浪しています。
ドイツの求人を見ていると、どうしても「職歴3年以上」「5年以上」といった中途有利の就職市場となっているので、インターンの時点で首切りされてしまい永遠に正社員採用されないと、いつまでも自身の市場価値が挙がっていかない負のスパイラルに陥ります。
何が言いたいのかというと、ドイツの大学院を卒業しても就職できるとは限らないし、就職しても安泰ではないよ、というお話でした。日本でもドイツでも、一部の勝ち組が優良企業の内定をかっさらっていきます・・