留学専門誌などを見ていると、アメリカ、カナダ、オーストラリアでの大学・大学院留学、あるいはその後の進路などの情報は多く出回っていますが、ヨーロッパの大学院卒業後の進路に関する情報は、未知数の部分が多いと思います。
今回は、ヨーロッパの大学院を卒業したら、どのような進路があるのか、見ていきたいと思います。
西欧vs東欧
ヨーロッパと言っても広いので、実際にはどこの国の大学院を卒業したか、というのが卒業後の進路を決めるファクターになります。
例えば、西欧の大学・大学院を卒業後、東欧や南欧で就職、というルートは可能ですが、東欧や南欧の大学・大学院を出て、西欧で就職、という場合、特殊技能(コンピューターサイエンス等)がないと難しいケースが多いです。
というのも、西欧と東欧の関係は、東アジア(日本、韓国、中国)と東南アジア(ベトナム、タイ、カンボジア)のような感じですので、西欧の大学を出ると、東欧にある西欧の企業の支店などで働くことが可能ですが、逆は困難です。
他にも、仕事の機会、という面でも、西欧のほうが日本語需要(日本の会社との折衝機会)が東欧に比べて多いため、我々の技能を活かすチャンスが多いです。
給与面で比較すると、やはり東に行くにつれて収入は少なくなり、それは我々日本人でも同様の扱いをうけます、日本人だからと言って、現地人よりも多く給料をもらえるほど甘くはありません。
現地の企業に就職する(研究職に就く)
まず、私の感覚ですが、海外の大学・大学院を卒業した人の4割程度は、現地に残り現地の企業に就職していると思います。あるいは、大学や研究室に残り、博士号を目指したり、研究職につく、といった感じでしょうか。
ただ、この「現地企業に就職する」というゴールを目指す場合、多かれ少なかれ現地語の習得が必修となります。
例えば、私はドイツの大学院をドイツ語で終了したため、卒業後はドイツの企業に就職することができました。
チェコの大学を卒業した井上君は、チェコ語を習得しなかったため、英語でも通じる、プラハにある外資系企業(フランス系企業)で働くこととなった形です。
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日本にいてヨーロッパの大学・大学院を想像すると、一見、華やかで、卒業後はどんな進路でも可能なように思えますが、決して卒業後に無条件に就職できるわけではなく、現地の学生に交じって同じように就活をしなくてはいけません。
職種のチャンスは、以下のような形です。どうしても、日本人である、ということを考慮すると、日本やアジアと関わる職種が多いように思えます。
- ロジスティック要員
- 購買要員(主にアジアからの)
- 営業要員(主にアジアへの)
- アジア(東アジア)マーケティング担当
- その他、日本語を要する仕事
現地の日系(外資)企業に就職する
大学院在学中に現地語を習得できなかった場合、現地にある外資系企業で就職する、という手があります。具体的には、上述のチェコの大学のケースのように、その国に進出している外資系企業(日系、仏系、独系、米系)で、現地語不要の会社を選ぶ、というパターンです。
例えば、フランスやドイツには多くの日系企業が進出しており、現地のコントローラーのような役割や、本社との折衝など、必ずしも現地語に堪能でなくても働けるポジションが存在しています。
私の場合、大学院卒業時に、3つ、ドイツにある日系企業の面接を受けましたが、全て内定をもらいました。多分、私が優れていた、というより、単にドイツの大学院卒業、というステータスが珍しかったからだと思います。
職種のチャンスは、以下のような形です。
- 現地社員のコーディネーター
- アシスタント(地域採用の場合)
- 欧州統括のマーケティング要員
- 欧州の代理店マネジメント
日本に戻り日本で就職する
最後のルートは、日本に帰国するパターンです。私の知る限り、3~4割くらいの大学院修了者は、日本に戻り日本で就職している気がします。
例えば、ビズリーチのようなサイトを使えば、海外経験者(基本的には海外で仕事経験のある人が重宝されますが)専門の日本での就活がスムーズに行えます。
望ましくは、この場合、海外の会社などで数か月有給インターンなどの経験をしておくと、日本に帰った時にキャリアアップしやすくなります。
ちなみに、私の場合、ドイツで知り合った日本の会社の中で、ドイツ進出を目指す会社などの日本本社から仕事の誘いを受けましたので、やはり、欧州(西欧水準)の大学院卒業者に対し、日系企業の一部はボーナスポイントを課すように思えます。
職種のチャンスは、以下のような形です。
- ロジスティック要員
- 欧州マーケティング統括要員
- 購買部
結論:卒業後の進路に関して
さて、最後に総括として、ヨーロッパの大学院卒業後の進路について私見を述べたいと思います。
- 西欧(北欧)の大学院卒の場合、就職チャンスは国内外合わせて広い
- 西欧・東欧に関わらず、現地語ができれば、卒業後現地企業での就職チャンスが広がる
- 西欧(北欧)の大学院の場合、卒業後給与水準は日本にいたころよりアップすることもある
- 東欧(南欧)の大学院卒の場合、給与水準は日本の水準を下回る
- いずれにせよ、英語力が身につくが、大学院卒という年齢を考えると、在学中の現地でのインターン経験や、専門知識の習得が望まれる
西欧の大学院 | 東欧の大学院 | |
現地企業就職のチャンス | 現地語が出来れば◎ | 現地語が出来れば〇 |
現地企業の初任給 | 30万円~60万円程度 | 5万円~15万円程度 |
日本就職のチャンス | 〇 | △ |
現地日系企業 | 〇 | △ |
もちろん、国によりけり、大学院によりけり、そして個人の資質とスキルによりけりだと思いますが、基本的に上記の内容が大学院卒の卒業後の進路に当てはめて述べられると思います。
いずれにせよ、ヨーロッパの大学院を卒業したとて、無条件で良い企業に入れるわけではない、ということを覚えておかなければいけません。